このページの要点
- 「指導」は、体系や教授法を用いて第三者に習得させる教授行為とし、有償・無償、名称の使用の有無を問わないと定義する。
- 境目の場面はヒヤリングで判定し、認定不要・紹介の範囲で可・要認定・認定でも不可の4区分で別紙にする。
- 認定講師の料金は本人が決める。教材の使用を非営利に限らず、認定講座の再生産(講師養成)だけを禁止する。
- 競業の制限は、期間・地域・業務の範囲を限り、メソッドを利用した類似事業に絞る。
結論:「指導」を定義し、境目の場面を先に決めておく
認定講師の制度で、認定を受けた人と受けていない人を分けるのは「教えてよいかどうか」です。ところが「教える」の範囲は、思っている以上にあいまいです。家族に少し説明するのは指導でしょうか。SNSで用語を紹介するのは。自分の既存の教室で、名前を出さずに考え方を取り入れるのは。ここを決めないまま「認定講師以外は指導してはならない」と書くと、受講者は何をしてよいのか分からず、事業者は違反を指摘しても「それは指導ではない」と言い返されます。
事務所が作成した認定講師規約では、まず「指導」を定義し、次にヒヤリングで12の場面を判定してもらい、その結果を別紙の具体例にしました。そのうえで、認定講師ができること・できないこと、卒業生の類似講座や競業をどこまで制限するかを書いています。このページでは、その順に解説します。名称の表示のルールは名称・ロゴのガイドライン、教材の使わせ方は教材の使わせ方と生成AIのページで扱います。
「指導」の定義:有償・無償、名称の使用の有無を問わない
同じ規約では、「指導」を「メソッドの体系又は教授法を用いて、第三者に技能又は知識を習得させるために行うレッスン、講座、ワークショップその他の教授行為をいい、有償又は無償及びメソッドの名称の使用の有無を問わない」と定義しました。
ポイントは、「有償・無償を問わない」と「名称の使用の有無を問わない」の二つです。無料なら教えてよいとすると、無料の勉強会を入口にして有料の別講座へ誘導する、という抜け道ができます。名称を使わなければ教えてよいとすると、名前を変えただけの同じ内容の講座が広がります。一方で、何でも「指導」に含めると、受講者の自由を不当に縛ります。そこで受講者向けの規約の側では、自分の創作や実演のための利用、体系的な内容を明らかにしない範囲での言及や感想の発信は制限の外とし(教授に相当する内容を含む発信は除く)、境目を具体例で示すことにしました。
- 自らの創作活動、メソッドの体系的な内容を明らかにしない用語又は考え方の紹介、受講の感想の発信及び受講生同士による非公開の復習のための教え合いは、指導の制限の対象としません。
- 家族又は友人への無償の説明、SNS、取材、書籍等での紹介であっても、段階的な訓練、具体的な教授手順又は教材の体系を再現し、受け手がメソッドを習得できる内容である場合は、指導又は教材利用として扱います。名称を使わない場合も同様とします。
- 不特定多数に向けて公開する場面では、当社が公に公開している内容に限り、出典を明示して紹介することができます。当社が公開を取り下げた旨を通知した内容は、その通知の後は紹介してはなりません。未公開であることを後から指定したことのみを理由として、既に行われた行為に違約金を課しません。
- 本条の制限は、当社との契約に基づく義務として適用されます。契約関係のない第三者の行為の適法性を、本規約のみで判断するものではありません。
受講者向けの規約の側にも、対になる条を置きます。同じ案件の講座利用規約では、有償・無償を問わず、メソッドの体系や教授法を用いて第三者に教えることは、認定修了者が認定規程に従って行う場合に限る、としたうえで、自分の創作のための利用や、体系的な内容を明らかにしない範囲の言及・感想の発信は制限の外としました。受講者向けの規約と認定講師規約で「指導」の範囲が食い違うと、受講中は許されていたことが認定後に禁止される、といった逆転が起きるため、二つの文書の定義を同じ言葉でそろえています。
3項の最後の一文は、公平のための歯止めです。事業者が後から「これは未公開の内容だった」と指定して、すでに行われた紹介に違約金を課すことはしない、と書いておけば、受講者は安心して感想や紹介を発信できます。4項は、契約の相対効を確認する一文です。
12の場面を判定する:ヒヤリングから別紙へ
ヒヤリングでは、12の場面について、指導に当たる(認定が必要)・当たらない(認定なしでよい)・条件付き、のどれかを答えてもらいました。自分の実演や創作での利用、家族・友人への無償の説明、SNSでの感想、SNSでの用語の解説、自分の既存の教室で名称を使わずに取り入れる、名称を使って取り入れる、無償の勉強会、有償のワークショップ、動画サイトでの解説、受講生同士の復習、取材・講演での紹介、書籍やオンライン講座の中での紹介、の12です。回答をもとに作った別紙は、次の4区分になりました。
指導と紹介の具体例(事務所の認定講師規約の別紙から)
- 可自分の実演・創作・練習での利用、受講の感想や体験の投稿認定は不要
- 可受講生同士の、非公開の復習のための教え合い公開の場で教える場合は別
- 可受講中・修了後の未認定者が、自分のレッスンで考え方を部分的に取り入れる名称を掲げた講座、体系的な指導、教材の配布、講師の称号の使用は認定講師に限る
- 条件付き家族・友人への簡単な紹介、SNSやブログでの用語の紹介、取材・講演での紹介、書籍やオンライン講座での概要の紹介体系的な手順・訓練・教材の再現を含めば指導として扱う
- 要認定自分の教室で、体系的に、又は名称を掲げて教える(名称を使わなくても同じ)部分的に取り入れるにとどまる場合を除く
- 要認定有償・無償のワークショップや勉強会での教授、動画サイトでの体系的な解説動画認定があっても、解説動画の公開は事前承諾などの条件による
- 不可講師養成、上位コースの開講、認定の付与認定講師にもできない。事業者だけが行う
- 不可教材の無許諾の複製・配布・販売、独自の動画講座やオンデマンド教材の販売動画講座等の販売は例外なく認めない
未認定者が考え方を部分的に取り入れることを制限の外にしたのは、依頼者の要望によるものです。受講した人が自分の仕事に活かすこと自体は止めない、という制度の姿勢を示しています。
認定講師が自分の生徒に修了証や参加証を出すことは、指導の一部として認めつつ、事業者の講師認定と誤認させない形に限ります。名称やロゴを使う場合は事前承諾とし、証書に「本書は当社の講師認定を示すものではない」旨を書いてもらう、といった表示のルールは名称・ロゴのガイドラインで決めています。指導の範囲の条と表示のルールの条が別の文書にあるときは、同じ場面について両方が同じ答えを出すかを確かめます。
こうした別紙は、規約の本文より先に読まれることが多い部分です。受講者からの「これはしてもよいですか」という問合せに、別紙の行を示して答えられるようにしておくと、運用の負担も減ります。
認定講師ができること・できないこと
認定講師の側から見た活動の範囲も、規約に並べておきます。事務所の認定講師規約では、対面・オンラインの個人レッスン、グループレッスン、ワークショップ、講演・セミナーを、有償・無償で行えるとし、レッスン料は認定講師が自ら定め、事業者は上限を設けない、としました。子ども、医療・福祉・教育の現場での指導も認めつつ、認定は医療行為など法令上の資格を要する業務の資格を与えるものではないこと、未成年者への指導は保護者や施設の責任者との必要な合意を得ることを書いています。
- 講師の養成と認定の付与は事業者だけ:講師の養成、上位コースの開講、認定の付与、その権限の第三者への授与は、認定講師にはできない。
- 補助者は可、指導は本人:準備・受付・機材の操作などの補助者は使えるが、指導は認定講師本人が行い、未認定者に任せない。
- 共同指導:共同で指導する全員の認定と必要なランクが有効な場合に限る。各講師は自分の担当範囲に責任を負う。
- 所属教室の名義:所属する教室やスクールの名義で指導を提供するのは認めるが、認定は本人に帰属し、教室の認定を表示しない。
価格を縛りたいという相談もあります。登録商標のメソッドを教える認定講座のレビューでは、「ブランドの価値を著しく損なう価格設定」の禁止は、独占禁止法の観点からも慎重に考えるべきで、自由型の制度なら価格は完全に自由とし、虚偽・誇大な表示だけを禁止すればよい、と整理しました。認定講師は独立した事業者として自分の生徒と契約するので、料金は本人が決めるのが原則です。
価格を縛らない代わりに、生徒に対する振る舞いは行動規範で決めておきます。料金・提供内容・日程・取消し・返金・問合せ先を生徒に事前に示すこと、効果や収益を保証しないこと、事業者の公式講座と誤認させる広告をしないこと、生徒をメソッドと関係のない商品やサービスに勧誘しないこと、などです(認定講師制度の書類の全体像)。活動の範囲を広く認めるほど、こうした行動の約束の重みが増します。
改訂の例 教室での営利利用
教材の使用許諾の範囲
教材などを教室やワークショップで「非営利的な」教育目的に限って使用を許諾する、という定めでした。
教育目的での使用を許諾し、「これらの活動が営利目的である場合も許容される。ただし、本講座と同一又は類似する認定講座又は資格取得型の講座を独自に企画・開催してはならない」としました。
ねらい認定講師が有料の教室を開けることと、認定講座を再生産すること(講師の養成)の禁止を、はっきり分けました。非営利に限ると、認定講師として生計を立てる道がなくなります。
卒業生の類似講座と競業の制限
「卒業生が同じような講座を開くのを止めたい」という相談は、養成講座の依頼者からほぼ必ず出ます。ただ、競業の制限は広すぎると無効と判断されるおそれがあります。登録商標のメソッドを教える講師養成講座のレビューでは、期間・地域・業務の範囲の三つが全て欠けた競業避止の条項は、抽象的で過度に広いとして無効と判断される可能性が高い、と指摘しました。提案したのは、「競業避止」ではなく「本メソッドを利用した類似事業の禁止」に絞ること、期間(例えば修了後2年)と地域(例えば日本国内)を限ること、禁止する行為を列挙することです。「名称を使わない模倣も禁止」は妥当だが、「実質的に同一又は極めて類似」の範囲がはっきりしない、とも書いています。
技術系のスクールを営む依頼者からは、こんな相談がありました。「卒業後に同業のスクールを開くのは遠慮してほしい。競合だからではなく、自分ができることと教えられることは別物で、中途半端に伝えると生徒もその先のお客様も傷つけるから。完全に禁止するのは厳しいか。一定期間だけ禁止すると、期間が過ぎたらよいと受け取られないか」。一方で、卒業後にサロンを営むのはもちろん自由で、学んだ技術は全てお客様のために使ってほしい、という考えでした。
相談を受けての受講契約の設計
自由にすること
- 仕事への活用
- 学んだ技術・知識を、自分のサロンや顧客への施術に活用することを明示的に認める
- 位置づけ
- 施術の提供と、教育事業での利用を条文で区別する
承諾制にすること
- 教育事業
- 教材・カリキュラム・技術の構成などを使った、第三者向けのスクール・講座・研修・認定制度・教材販売は、事前の書面による承諾を要する
- 名称
- スクールの名称の利用を制限する
将来に残すこと
- 権限
- この契約は認定講師や講師養成の権限を与えるものではない
- 制度
- 将来の認定講師制度は別途定める
期間で区切る代わりに、承諾制にして「教えたいなら相談してほしい」という道を残しました。
ほかの案件でも、考え方は共通しています。認定講師養成講座の受講契約では、提供した教材の内容を認定講師がアレンジできる範囲をガイドラインで示し、品質に重大な影響を与える部分をガイドラインを超えて変えたら、そのブランド名は使えない、一部を変えても直ちに完全なオリジナルにはならない、オリジナルと表示しない、提供した教材を基礎に競合する認定制度や講師養成制度を作らない、と定めました。別の講座のレビューでは、「本講座の内容を利用して第三者に同種の講座を開くことを禁止する」と明確に書かないと、将来「分裂講座」が生じる、と指摘しています。
講師を養成できる上位講師が退任する場面では、さらに対象を絞りました。合意書では、講師養成の事業(講座・研修・資格付与)の開講・関与と、業としての講師への手技指導に限り、期間は2年、地域は日本国内(オンラインは受講者の所在地を問わない)とし、一般向けのレッスンは自由としています。元の契約にあった「同種・類似の事業の広い禁止」は効力に疑問があるため、対象を絞って定め直したものです(上位講師の退任と引継ぎ)。
法人研修・派遣・集中講座の担当とランク
事業者が法人から研修の依頼を受け、認定講師に担当してもらう制度では、その担当の資格と、お金の流れを分けて書きます。事務所の認定講師規約では、法人研修と派遣講師の業務は上位のランク以上、法人・団体向けの数日間の集中講座の単独担当は最上位のランクに限る、としました。集中講座は、事業者が講師を指定し、事業者と申込法人の契約に従って提供するもので、認定講師が独自に募集したり、事業者を代理して契約したり、事業者の名義で受講料を受け取ったりする権限はありません。
- ランクの取得は担当できる資格を示すだけで、派遣・案件の紹介・報酬・最低発注量・独占的な担当を保証しない。
- 派遣や集中講座の担当は、日程、担当範囲、報酬、旅費、教材、取消し、責任の分担を案件ごとに書面又は電子メールで合意する。
- 申込法人が事業者に払う受講料と、事業者が認定講師に払う報酬を同じものとして扱わない。
- 事業者が紹介した案件を認定講師が担当するときは紹介料を受け取ることがあり、その額は案件を受ける前に書面又は電子メールで明示する。それ以外は、認定講師個人の活動から手数料を受け取らない。
最後の項目の「案件を受ける前に明示する」は、事務所から提案として加えたものです。報酬から手数料が差し引かれることを後から知らされると、認定講師との信頼関係が崩れます。事業者から認定講師に仕事を出す場面は、講師への業務委託として取引条件の明示などが問題になるため、詳しくは講師業務委託契約書のページで扱います。
ご相談と回答 活動の範囲
すでに自分の教室を営んでいる受講者が、学んだ考え方をレッスンに取り入れたいと言っています。認定を取るまで禁止すべきですか。
事務所が作成した規約では、受講中・修了後の未認定者が、自分のレッスンの中で学んだ考え方を部分的に取り入れることは制限の外としました。そのうえで、メソッドの名称を掲げた講座、体系的な指導、教材の配布、講師の称号の使用は、認定講師に限るとしています。仕事に活かすことと、制度の名前で教えることを分けて書く形です。
認定講師が、無料の解説動画を動画サイトに出したいと言っています。
同じ規約では、無料の解説動画の公開は、公開する内容について事業者の事前承諾を得て行うとしました。体系的な解説は教材の公開に近くなるためです。有料の動画講座やオンデマンド教材の販売は、例外なく認めないとしています。
認定講師が海外で教えたいと言っています。地域を限定すべきですか。
同じ規約では、活動する国や地域を規約では限定せず、本人が活動地の法令と第三者の権利を守ること、その国での商標登録や独占的な使用は保証されないことを確認する、としました。名称の表示は国ごとの登録の状況によって変わるため、ガイドラインで事業者が案内する形にしています。
ヒヤリングの問いと理由 指導の範囲
認定講師が指導できる対象(個人・法人・子ども・医療や福祉の現場)と形式(対面・オンライン・グループ・講演・動画配信)を教えてください。
認める範囲を列挙し、認めないもの(動画講座の販売など)を明記するためです。
料金の上限・下限の指定、報告、ロイヤリティはありますか。
価格を縛るかどうかと、手数料を取る場面を決めます。
体系の全体を教えてよいのですか、入門の範囲に限るのですか。講師の養成は認めないという理解でよいですか。
認定講師の権限の上限を決めます。
補助者、共同指導、所属教室の名義での指導を認めますか。
教室単位で活動する認定講師が多い制度ほど、ここが重要になります。
指導に当たる・当たらないの判断が分かれそうな場面で、過去に受講生から質問があったものはありますか。
別紙の具体例に加える候補です。
よくあるご質問
受講生がSNSでメソッドを解説していました。止められますか?
規約の定めによります。事務所が作成した規約では、感想や用語の紹介は自由とし、事業者が公開している内容に限って出典を示して紹介できるとする一方、段階的な訓練や教授の手順、教材の体系を再現して習得できる内容は「指導」として扱うとしています。
卒業生がサロンを開くことまで止めたくはありません。
学んだ技術を自分の仕事に活かすことは明示的に認め、教材やカリキュラムを使って第三者に教える事業(スクール・講座・認定制度・教材販売)だけを事前承諾制にする方法があります。仕事への活用と教育事業での利用を、条文で分けて書きます。
競業避止は、何年までなら大丈夫ですか?
一律の基準はありませんが、期間・地域・業務の範囲が全て欠けた条項は無効と判断される可能性が高くなります。事務所が手がけた退任の合意書では、講師養成の事業に対象を絞り、期間は2年、地域は日本国内としました。
認定講師のレッスン料に上限や下限を設けてもよいですか?
認定講師は独立した事業者として生徒と契約するため、料金は本人が決めるのが原則です。価格を縛る条項は独占禁止法の観点からも慎重に考える必要があり、虚偽・誇大な表示を禁止するにとどめる設計をお勧めしています。
認定講師が補助者に教えさせてもよいですか?
準備や受付、機材の操作などの補助は認めても、指導そのものは認定講師本人が行い、未認定者に任せない、と定めるのが一般的です。共同で指導する場合は、全員の認定が有効であることを条件にします。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた資格スクール・養成講座の受講契約書、講座利用規約、認定講師規約、商標・ブランドガイドライン、協会の会員規約、上位講師の退任合意書、講師業務委託契約書、法人向け講座の規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)