このページの要点
- 受講資格は、資格の種類・確認の方法・申込名義の区分(個人、個人事業主、法人)で書く。区分は本人の申告で、実態で判断される旨も書く。
- 特定商取引法26条1項1号の適用除外は、名義でなく実態で決まる。全員に同じ書面を出し、クーリング・オフの告知は条件を付けずに書き、適用の範囲は別の条で説明する。
- 提携先の会場の体験会は訪問販売、オンライン面談は電話勧誘販売になり得る。キャンセル料の表には、法定の上限と接続する一文を置く。
- 実技は見学と実地に分け、指示の出し手と資格の確認を書く。健康状態の申告は要配慮個人情報の同意と兼ね、モデルや撮影の同意は別に取る。
結論:資格者・職人向けの講習でも、「事業者だから対象外」と決めつけない
国家資格などを持つ専門職や、内装・板金などの職人といった、すでに仕事として技術を持っている人だけを対象にした講習があります。受講資格を「有資格者」「実務経験者」に絞ると、主催者は「受講者はみんな事業者だから、消費者向けのルールは関係ない」と考えがちです。けれども、受講者が資格や技能を持っていることと、その申込みが「営業のために若しくは営業として」されたものであることは、別の話です。勤務先の指示ではなく、自分の技能を高めるために自費で受講する人は少なくありません。
この区別を誤ると、体験会や説明会の会場で申込みを受けたときに、特定商取引法の書面の交付とクーリング・オフ(申込みの撤回・契約の解除)の告知が必要だったのに何もしていなかった、という状態になります。そうなると、受講料を支払った後でも、書面を受け取った日から数えるクーリング・オフの期間が進み始めていないことになり、講習を受けた後であっても受講料の全額を返すことになりかねません。
このページでは、受講資格を限った技術講習の契約書と規約について、次の五つに絞って整理します。
- 受講資格をどう書き、資格をどう確かめ、申込みの名義をどう区分するか
- 提携先の会場で開く体験会・説明会と、オンライン面談からの申込みで、どの規律がかかり得るか
- 実技演習の安全管理(見学と実地の区別、指示の出し手、健康状態の申告)
- モデルの方の情報と、撮影・掲載の同意の作り方
- 講師の肩書や講習の宣伝として何を載せるか
資格が必要な行為を伴う技術講習で、どの行為を誰ができるか(医療法令や職人の資格制度など)の整理は、ここでは扱いません。契約書の側でできるのは、法令上できる範囲で講習を設計したうえで、その前提を書面に残すことまでです。受講料の返金の段階設計や分割払い、講師認定を付ける講座の受講契約の一般的な論点は養成講座の受講契約書で、法人が社員を受講させる場合の規約は企業研修・法人向け講座で扱っています。
受講資格の書き方と、申込名義の三区分
受講資格は、「誰でも受けられる講習」と違い、契約の中身の一部です。資格のない人に実技をさせてしまうと、主催者も会場も、受講者本人も困ります。そこで、資格を満たしていることを、申込みの時点で確かめる仕組みを契約書に入れます。
資格者向けの講習で確かめたいのは、次の三つです。
- 誰が受講するのか:申込みをする人と、実際に講習を受ける人が同じか。法人が申込みをして社員が受講するなら、受講者として指定された個人が誰か。
- どの資格・経験を持っているのか:資格の種類、登録番号や免許番号、職人であれば経験年数や所属。自己申告にとどめるのか、免許証などの提示まで求めるのか。
- 何のために受講するのか:事業のためか、そうでないか。この区分が、後で述べる特定商取引法の適用除外の判断の材料になります。
資格の確認の強さは、講習の中身によって変えます。座学だけなら申告で足りる場合でも、受講者が人や機器に触れる実技を含むなら、実技に参加する日に免許証などを見せてもらう、確認ができなかった人は実技に参加できず見学にとどまる、と決めておく方法があります。契約書に「確認できた人に限る」と書いておけば、当日に確認できなかったときの扱いを、その場で揉めずに済ませられます。
申込名義の三区分(一例)
個人(事業のためではない)
- 典型的な場面
- 勤務先とは関係なく、自分の学びとして自費で受講する
- 書き方
- 「事業のためではなく受講する場合」と区分を明示し、特定商取引法のクーリング・オフが適用され得る前提で書面を整える
個人事業主
- 典型的な場面
- 開業済み、または開業の準備中で、事業のために受講する
- 書き方
- 営業のために又は営業として締結する場合は適用除外になり得ることを、実態で判断する旨とあわせて書く
法人
- 典型的な場面
- 会社が費用を負担し、役員や社員を受講者として指定する
- 書き方
- 受講指定者を氏名と役職で特定し、契約書の受講者の義務を指定者にも守らせる責任を法人に負わせる
区分の選択は、本人の申告です。申告が事実と違うと分かったときの措置(実技への不参加、解除など)を、同じ条に置いておきます。
消費者契約法でも、同じ区分が出てきます。同法は、個人であっても「事業として又は事業のために契約の当事者となる場合」は「消費者」に含めず、事業者として扱います(消費者契約法2条1項・2項)。ですから、個人事業主の区分で申し込んだ人は、同法の消費者の保護(不当な条項の無効など)の対象から外れ得ます。他方、「個人(事業のためではない)」の区分で申し込んだ人には、同法の規律がかかる前提で、返金やキャンセル料の条項を作る必要があります。
この人は適用除外の対象になるか(考え方の整理)
- 条件付き勤務先の指示で、費用を会社が負担して受講する法人が申込みをする形に整え、受講指定者を特定する。法人が営業のために締結するといえるかは実態で判断する。
- 条件付き勤務している人が、自分の判断で、自費で受講する事業のためとは限らない。適用除外に頼らず、「個人(事業のためではない)」の区分で書面を整える設計が安全。
- 可開業済みの個人事業主が、自分の事業の技術として受講する営業のために締結する場合に当たり得る。ただし、名義だけでなく契約の実態で判断される。
- 条件付き開業の準備中で、まだ事業を始めていない人「準備中」をどう扱うかを区分に明示し、書面の整備はクーリング・オフがあり得る前提で行う。
- 条件付き職人が、技能を高めて賃金を上げたいと考えて自費で受講する雇われている立場なら事業のためとはいえない場合がある。申告の内容と、受講の目的の欄の記載を残す。
「可」は、適用除外に当たる可能性が比較的高いという意味で、確定的な結論ではありません。
特定商取引法の適用除外を、どこまで頼れるか
特定商取引法は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の規律について、申込みをした人が「営業のために若しくは営業として」締結する契約には適用しない、と定めています(同法26条1項1号)。資格者や職人向けの講習では、この除外があるので何もしなくてよい、と理解されることがあります。しかし、次の三つの理由から、この除外を前提にした設計は危険です。
- 判断は実態による:名義が個人事業主でも、実際には勤務先とは無関係の学びで、事業のための支出といえないなら、除外に当たらない可能性があります。逆に、名義が個人でも、事業のためなら当たり得ます。名義だけでは決まりません。
- 申込者が混在する:同じ講習に、事業者と、事業のためでない個人が混ざるなら、書面を出さない運用は、後者の人に対する義務の不履行になります。書面は一部の人にだけ出す、という運用は現実的ではありません。
- 除外の条文が及ぶ範囲が限られる:26条1項の除外は、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の三つの節を対象にします。受講料の対価で仕事を紹介するなど、別の取引類型に当たる場合の規律は、この除外の外にあります(後で述べます)。
そこで、受講者が事業者かどうかにかかわらず、書面は全員に同じものを出し、クーリング・オフの告知を載せる、という設計が、運用の面でも確実です。事業のために締結する人には適用がない旨を、書面の本体ではなく、別の条で説明します。この理由は、次の項で述べます。
体験会・説明会・オンライン面談:導線ごとに何がかかるか
技術講習の集客は、提携先の施設を借りて開く体験会や説明会、オンライン会議の個別面談で行われることが多くあります。契約書の書き方は、申込みをどこで受けるかによって変わるので、導線ごとに分けて考えます。
| 導線 | 考えられる類型 | 条文上の手がかり | 契約書での手当て |
|---|---|---|---|
| 申込フォームだけで完結する(会場にもオンライン面談にも来ない) | 通信販売 | 特定商取引法2条2項。電話勧誘販売に当たらないものに限る | 広告・申込画面の表示と、取消し・返金の表示。クーリング・オフの制度は、役務の契約にはない |
| 提携先の会場で開く体験会で、その場で申込書を受ける | 訪問販売になり得る | 同法2条1項1号。営業所等は、施行規則1条に列挙された場所 | 申込みを受けたときに書面を交付、契約を結んだときも書面。クーリング・オフの告知 |
| オンライン会議で説明し、その場または後日にフォームで申込みを受ける | 電話勧誘販売に当たるかは、連絡の方法と勧誘の態様による | 同法2条3項。電話をかけ又は政令で定める方法で電話をかけさせ、その電話で勧誘する | 電話勧誘販売に当たり得る前提で、同法18条・19条の書面とクーリング・オフの告知を整える |
| 主催者の施設で、日常的に開いている講習の説明を受けて申し込む | 営業所等での契約 | 営業所等で、特定顧客以外から申込みを受ける場合は、訪問販売に当たらない | 通常の申込書と規約。ただし、会場に誘引する方法によっては特定顧客に当たる |
「特定顧客」は、営業所等以外の場所で呼び止めて営業所等に同行させた人など、政令で定める方法で誘引した人をいいます(同法2条1項2号)。
提携先の施設やショールームなどを借りて開く体験会は、主催者の「営業所等」には当たらない可能性が高い場所です。施行規則1条は、営業所、代理店、露店・屋台店の類、そして「一定の期間にわたり、商品を陳列し、当該商品を販売する場所であつて、店舗に類するもの」などを営業所等と定めています。単発で借りた会場は、こうした場所の列挙の趣旨に照らして、通常は営業所等といえないと考えられます。そうすると、その会場で受ける申込みは、訪問販売として扱われます。
訪問販売では、申込みを受けたとき、直ちに申込みの内容を書いた書面を交付する義務があり、その場で契約を結んだ場合には、それに代えて契約の内容を明らかにする書面を交付します(同法4条1項、5条1項)。書面の交付を受けた日から8日を経過するまでは、書面または電磁的記録でクーリング・オフができ、その効力は通知を発した時に生じます(同法9条1項・2項)。クーリング・オフがあったときは、講習が一部提供されていた後でも、損害賠償や違約金を請求できず、役務の対価も請求できません(同法9条3項・5項)。
オンライン会議の個別面談が電話勧誘販売(同法2条3項)に当たるかどうかは、会議への招待の方法や勧誘の態様によって判断が分かれ得ます。当たると評価される場合に備えるなら、電話勧誘販売の書面(同法18条・19条)とクーリング・オフ(同法24条)を前提に書面を整えておくのが安全です。クーリング・オフの期間、効力の発生、損害賠償等の請求の禁止は、訪問販売と同じ仕組みです。
体験会の当日に申込みを受けるかどうかの選び方
- A 当日は申込みを受けない後日、フォームや郵送で申込みを受ける。ただし、会場で申込みを促したと評価される運用なら、後日の申込みも勧誘と一体で見られる余地がある。
- B 当日申込みを受ける契約書を、書面交付の義務を満たす内容にして、その場で渡す。割引などの当日特典を付けるなら、その条件を書面に明記する。
- C 書面兼用の契約書にする一通の契約書が、申込書面と契約書面を兼ねる。書面を受け取った日を書く欄を設け、クーリング・オフの起算日が分かるようにする。
- D 運用が設計から外れても困らない形にするオンライン面談で勧誘する場合も同じ書面を使えるよう、電話勧誘販売の書面を兼ねる旨も書く。
A〜Dは択一ではなく、運用の段階を表しています。実際の導線に合わせて、どこまで書面で手当てするかを決めます。
クーリング・オフの告知は、条件を付けずに書く
書面には、書面の内容をよく読むべき旨を、赤枠の中に赤字で書かなければならず、字の大きさにも決まりがあります(特定商取引法施行規則6条2項・3項)。クーリング・オフに関する事項として書面に記載すべき内容は、施行規則7条が定めています。ここで、「訪問販売に当たる場合は」「事業者の方には適用されません」といった但し書きを、赤枠の中に入れたくなります。受講者の多くが有資格者であれば、なおさらです。しかし、赤枠の中は条件を付けずに告知し、どの申込みに適用されるかの説明と、営業のために締結する場合の除外の説明は、赤枠の外の条に置くのが、安全な書き方です。
理由は二つあります。一つは、条件付きで書くと、法定の記載が欠けていると評価され、クーリング・オフの期間が進まないおそれがあることです。もう一つは、受講者が「自分は事業者だからできない」と誤解して、期間内に行使しない結果になれば、クーリング・オフに関する不実の告知(同法6条1項5号)を疑われかねないことです。不実の告知があった場合には、申込者等は契約の申込み等の意思表示を取り消すことができます(同法9条の3第1項)。
書き方の例(一般的な例) クーリング・オフの告知と適用の範囲
赤枠の中の書き方
「訪問販売に該当する場合に限り、受講者は8日間のクーリング・オフができます。ただし、事業者の方には適用されません。」
赤枠の中は、書面を受け取った日から8日を経過するまで、書面または電磁的記録でクーリング・オフができること、通知を発した時に効力が生じること、損害賠償や違約金を請求されないことなどを、条件を付けずに書く。
ねらい施行規則7条の記載事項を欠かない。事業者に適用がない説明は、赤枠の外に置く。
適用の説明
(説明がない。または赤枠の中に混在している)
別の条に、「次条のクーリング・オフは、訪問販売または電話勧誘販売に該当する場合に適用されます。営業のために又は営業として締結する場合には適用されませんが、該当するかは申込みの名義のみによらず、契約の実態に基づいて判断されます」と書く。
ねらい名義だけで決まらないことを明示し、主催者が一方的に「事業者だから」と判断する余地を狭める。
キャンセル料の表は、法定の上限と接続する
受講日までの日数に応じて、所定の割合を受講料から差し引く表を作るのは、よくある方法です。ただ、訪問販売や電話勧誘販売に当たる契約が解除されたとき、損害賠償額の予定や違約金の定めがあっても、請求できるのは法律が定める額が上限になります。役務の提供の開始前の解除なら「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」、提供の開始後なら「提供された役務の対価に相当する額」に、法定利率による遅延損害金を加えた額です(同法10条1項4号・3号、25条1項4号・3号)。
この上限を超える部分は請求できないので、キャンセル料の表を置いたうえで、「訪問販売または電話勧誘販売に該当する解除には、特定商取引法10条または25条が定める額を上限とする」という一文を足します。上限条項がないと、表の割合の全部が争われるおそれがあります。日程が複数に分かれる講習では、各日程を別個の役務の提供として、日程の初日を基準に当てはめる、と決めておくと、一部の日程だけ欠席した場合の計算が明確になります。
実技演習の安全管理:見学と実地を分け、指示の出し手を書く
技術講習の核心は実技です。実技には事故の危険が伴うので、契約書と規約に、安全管理の枠組みを書いておく必要があります。ここで一番大切なのは、誰が、誰の指示で、何をするのかを分けて書くことです。
実技の形は、大きく二つに分けられます。
実技演習の二つの型
見学演習
- 内容
- 資格を持つ施術者や作業者が実際に行い、受講者はそれを見て、指導を受ける
- 契約書での書き方
- 受講者は対象に対する作業を行わないことを、遵守事項として確認させる
実地演習
- 内容
- 受講者自身が、指示を受けた範囲で、対象に対して作業を行う
- 契約書での書き方
- 資格の確認ができた人に限ること、指示を出す人(会場の責任者や立会いの有資格者)の指示の範囲を超えないこと、保護具の装着、機器・工具に勝手に触れないことを定める
二つを分けておけば、日程ごとに「見学のみ」か「実地もあり」かを契約書の欄で選ぶ形にでき、実地に参加できない人の扱いも明確になります。
実技の対象者への対応を、会場となる施設が自ら行う講習では、その対応は会場の施設の責任のもとで、施設の有資格者の判断と指示に基づいて行われ、主催者は講習の企画と運営を担うだけである、という整理が書面に出てきます。これは、役割分担を前提にして、主催者の立場を誤解されないようにする書き方です。どの行為にどんな資格が必要か、誰がしてよいかは、それぞれの分野の法令で決まり、契約書が決めるものではありません。契約書には、前提となる体制(会場側の有資格者の指示のもとで行われること)を記載し、受講者にも確認させる、という役割だけを持たせます。
職人の技術講習でも、同じ発想が使えます。高所作業、電動工具、火気、重量物など、危険を伴う実技がある講習では、次の事項を決めておきます。
- 実技の指導をする人と、安全に責任を持つ人(現場の統括者)は誰か。
- 保護具(保護眼鏡、手袋、ヘルメットなど)は誰が用意し、装着を誰が確認するか。
- 受講者が持ち込む工具や材料は、使ってよいか。持ち込みを禁止するなら、その理由を規約に書く。
- 体調が悪いとき、飲酒後、睡眠不足などのときは、実技に参加させない権限を主催者が持つこと。
- 事故があったときの連絡先と、救急対応の方法。受講者の緊急連絡先を、申込みの時に取っておくこと。
また、職人向けの講習では、法令が定める資格制度との区別にも注意が要ります。労働安全衛生法は、一定の危険な業務に就かせるときは、免許を受けた人、または登録を受けた者が行う技能講習を修了した人などでなければならない、と定めています(同法61条1項)。事業者が労働者に行う特別の教育(同法59条3項)も、別の制度です。民間の技術講習の修了証は、こうした法令上の資格に代わるものではありません。「修了すれば〇〇の作業ができる」と受け取れる宣伝や、修了証の文言は避け、法令上の資格との関係を、規約や修了証に明記しておきます。修了証の扱いは修了と認定試験のページも参照してください。
確認したい問いと、その理由 実技のある技術講習の申込み前に
実技は見学だけか、受講者が自分で行う実地もあるか。コースや日程によって違うか。
契約書の欄を日程ごとに分け、資格の確認が実地に参加する条件になるかを決めるため。
実地の指示を出す人は誰か(会場の責任者、立会いの有資格者、主催者側の講師)。
指示の出し手と責任の所在を書き分けるため。主催者を施術や作業の主体と誤解させないため。
使用する機器や材料について、受講者が誤解しやすい点(法令上の位置づけ、安全性の確認の状況など)はあるか。
受講者が誤解しないよう、事実を説明して了解を取る欄を設けるため。受講後に自分の現場で同種のものを使う場合の判断は受講者側にあることも、書いておく。
受講者の健康状態や服薬、アレルギーを、事前に申告してもらうか。
実技中の事故の防止と、緊急時の対応のため。申告の内容は要配慮個人情報になり得るので、取得の同意も必要(次の項)。
実技中の事故や体調不良について、保険や補償の対象になる範囲はどこまでか。
補償の範囲を受講者に伝え、理解したことを残すため。
モデルの方の情報と、撮影・掲載の同意
実技では、モデルとして協力してくれる方がいます。その方々の情報と、写真・動画の扱いについて、受講者との契約とは別に、同意の取り方を整えておく必要があります。
健康状態の申告は、要配慮個人情報の取得になる
受講者やモデルから、病歴や服薬、アレルギーなどの健康状態を申告してもらうと、その情報には、病歴その他の「要配慮個人情報」が含まれ得ます(個人情報保護法2条3項)。個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで要配慮個人情報を取得してはいけません(同法20条2項)。したがって、申告書は、「申告」と「取得・利用の同意」を一つの書面に兼ねさせる形が実務的です。
- 受講者は、実技演習への参加に影響を及ぼすおそれのある事情(治療中の疾病、服薬、アレルギー、当日の体調等)について、真実かつ正確に申告する。申告内容に変更が生じたときは、直ちに申し出る。
- 前項の申告事項には、病歴その他の要配慮個人情報が含まれることがある。受講者は、主催者が、これを次の目的の範囲で取得し、利用することに同意する。(1)実技演習の実施及び安全の確保 (2)体調不良その他の事故への対応 (3)苦情及び紛争への対応 (4)法令に基づく義務の履行
- 受講者は、主催者が、前項の情報を、実技演習の安全を確保するために必要な範囲で、立ち会う有資格者、会場の管理者、救急対応のための搬送先に提供することに同意する。
- 個人情報の取扱いの詳細は、主催者が定めるプライバシーポリシーによる。
利用目的は、できる限り特定します(個人情報保護法17条1項)。目的の範囲を超える利用には、あらかじめ本人の同意が必要です(同法18条1項)。第三者への提供は、原則としてあらかじめ本人の同意が必要です(同法27条1項)。
救急搬送先に情報を渡す場面は、人の生命・身体の保護に必要で本人の同意が得られないときの例外(同法27条1項2号)に当たり得ますが、事前の同意を取っておけば、迷う場面が減ります。安全の確保のために情報を渡す相手を、あらかじめ列挙しておく書き方が整理しやすい理由は、この点にあります。
モデルの同意書:誰の、何についての同意か
モデルが受講者とは別の人であるとき、その人にも、実技の内容、リスク、撮影の有無を説明し、書面で同意をもらいます。モデル同意書に入れたい事項を、次のように整理できます。
| 事項 | 書く内容 | 注意 |
|---|---|---|
| 実技の内容と目的 | どのような講習で、どのような作業・施術を、誰の指示のもとで行うか | 受講者が実地演習を行うなら、その旨を隠さない。主催者や講師が行う場合と区別する |
| リスクと中止の自由 | 起こり得る不快感や症状と、いつでも中止を申し出られること | 中止を申し出たことで不利益を受けないと書く |
| 健康状態の申告 | 治療中の疾病、服薬、アレルギーなどを真実に申告する義務 | 要配慮個人情報の取得の同意と一緒に取る |
| 謝礼・費用 | 謝礼の有無、交通費の負担。無償なら無償と書く | 金額の具体的な数字は書面の別欄にする |
| 撮影・掲載 | 撮影の有無、掲載の媒体(社内記録、自社サイト、SNS、広告物)。同意しない選択肢を用意する | 媒体ごとにチェックする形にし、いつでも将来に向けて撤回できる旨を書く |
| 個人の特定 | 顔、氏名、症状が分かる形での掲載か、分からない形での掲載か | 個人が分かる形で紹介するときは、本人の同意が前提 |
| 未成年の場合 | 法定代理人の同意と署名 | 未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意が必要で、これに反する行為は取り消し得る(民法5条1項・2項)。成年年齢は18歳(民法4条) |
撮影の同意は、受講契約の本体と分け、撤回の限界を書く
講習の風景を撮影し、受講者の顔が写った写真や動画を、サイトやSNS、広告物に載せたいという主催者は多くいます。同意は、受講契約の申込みの条件にせず、媒体ごとにチェックを付ける形で取り、同意しない選択肢を用意します。撤回については、いつでも将来に向かって撤回できるとしたうえで、すでに公開した印刷物や、第三者が保存した画像などの回収には限界がある、と限界も書いておくと、撤回を受けたときの対応が明確になります。講師の側の同意(講師の氏名・肖像の利用)は、受講者の同意とは別に、講師との契約で決める必要があります(講師業務委託契約書)。
講師の肩書、講習の宣伝、提携先の紹介:主催者が載せてよいこと
技術講習の集客では、講師の経歴や肩書、受講後の成果をうたいます。資格者が講師を務める講習では、そのまま載せると、講師やその勤務先の広告規制に触れるおそれがあることに注意します。
職業によっては、その業務に関する広告そのものに法令上の制限があります。たとえば医療に関する広告は、医業や病院・診療所に関して、医療を受ける人を誘引するための手段としての表示をする場合に、虚偽の広告の禁止や、誇大な広告の禁止などの基準が適用されます(医療法6条の5)。こうした規制は、広告に当たるかが出発点で、講習の案内そのものが、サービスを受ける人を誘引する手段と見られるかどうかが問題になります。講習の宣伝に講師紹介を載せる場合に、講師の勤務先の所在地や電話番号、リンクを載せると、その勤務先の広告と見られる可能性が出てきます。
そこで、媒体ごとに載せる事項を分けておく方法があります。たとえば、主催者のウェブサイトの講師紹介は経歴や担当講習に限り、勤務先の情報や専門性を示す称号の表示は、載せる前に確認する、といった運用です。主催者は、講師が自分の広告に関するルールを守れるよう、講師紹介に載せる事項を確認する書面(講師に確認してもらう様式)を用意しておくと安全です。講師の側のルールは、講師の資格によって異なるので、主催者が代わりに判断することはしません。個別の判断が必要になる場面は、このページでは扱いません。
資格に限らず、講習の効果を表す表示は、景品表示法の対象でもあります。講習の内容について、実際のものよりも著しく優良であると示す表示で、不当に顧客を誘引するおそれがあるものは禁止されています(不当景品類及び不当表示防止法5条1号)。「受講すれば確実に収入が増える」「修了者の全員が独立できる」といった表示は、実績の裏付けがなければ避けます。講習の成果を、受講者個人の努力や条件によって異なるものとして書くことが、契約書にも宣伝にも通じる基本です。
最後に、提携先の企業や施設などへの紹介を、受講の誘い文句にする場合の注意です。受講料の負担を伴って、講座を利用する仕事を提供またはあっせんする、そしてその仕事で得られる利益を示して誘う取引は、業務提供誘引販売取引に当たり得ます(特定商取引法51条1項)。この取引類型には、26条1項1号の適用除外が及びません(同号は、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の三つの節を対象にしています)。「修了者には提携先を紹介する」という訴求は、受講の勧誘に使わない、紹介の義務を負わないと規約に書く、という整理になります。詳しくは養成講座の受講契約書のページで述べています。
契約書・規約・同意書の組み立てと、優先関係
技術講習の書類は、次の組み合わせで作る例が多く見られます。
| 書類 | 決めること | ポイント |
|---|---|---|
| 個別受講契約書(兼申込書) | コース、日程、会場、受講料、支払、名義の区分、書面交付日 | 書面交付の義務を満たす内容にして、書面を兼ねる。受講規約より優先すると書く |
| 受講規約 | 資格の確認、キャンセル料、中止・延期、実技の遵守事項、知的財産、禁止事項 | 契約書で決めたことの細目。民法の定型約款(548条の2)に当たり得ることを前提に、変更の手続も書く |
| 健康状態申告書兼同意書 | 健康状態の申告、要配慮個人情報の取得・提供の同意、遵守事項の確認 | 実技に参加する人ごとに取る |
| モデル同意書 | 実技の内容、リスク、撮影・掲載、未成年者の法定代理人の同意 | モデルが受講者と別の人なら、別の書面にする |
| プライバシーポリシー | 個人情報の利用目的、第三者提供、委託、開示請求の窓口 | 要配慮個人情報を扱う旨と、その目的を載せる |
書類が増えると、書かれた内容が食い違うことがあります。それを避けるために、契約書に「契約書と規約が抵触するときは契約書を優先する」と書き、規約には、契約書で合意した事項は変更の対象としない、と書いておきます。また、「契約書と規約が完全な合意であり、それまでの説明や広告に優先する」という完全合意の条項を置く場合は、特定商取引法による取消し(同法9条の3)や消費者契約法による取消しなど、法令に基づく権利の行使を妨げない旨を併記しておくのが、通常の書き方です。勧誘のときの説明と契約の内容が違うとして争われるのを防ぐ効果はありますが、法律上の取消権を消すことはできません。
準拠法や合意管轄も、消費者と事業者で書き分けます。相手が事業者なら専属的合意管轄でも構いませんが、消費者が相手なら、法令で定まる管轄に加えて主催者の所在地を管轄とする、付加的な書き方にとどめるのが無理のない方法です。
よくあるご質問
受講資格を有資格者に限った講習でも、クーリング・オフの告知は必要ですか?
必要になることがあります。特定商取引法の適用除外は、「営業のために若しくは営業として」締結する契約が対象で、名義ではなく契約の実態で判断されます。自費で自分の学びのために受講する人は、事業のためとはいえない場合があります。そこで、受講者全員に同じ書面を出し、クーリング・オフの告知を条件なしで載せ、適用の範囲の説明は別の条に置く設計が確実です。
提携先の施設で開く体験会で、その場で申込みを受けてよいですか?
受けること自体はできますが、訪問販売に当たり得ます。営業所等は施行規則1条が列挙しており、単発で借りた会場は通常これに当たらないと考えられるためです。その場合は、申込みを受けたとき、または契約を結んだときに法定の書面を交付し、書面を受け取った日から8日間のクーリング・オフを告知します。当日は申込みを受けず、後日フォームで受ける運用にする方法もあります。
実技で受講者がモデルに作業を行う場合、契約書に何を書きますか?
見学演習と実地演習を区別し、実地演習は資格の確認ができた人に限ること、指示を出す人の指示の範囲を超えないこと、保護具の装着、機器に勝手に触れないことを遵守事項にします。会場の施設がモデルへの対応を自ら行うときは、その対応は会場側の責任のもとで行われ、主催者は講習の企画と運営を担う旨を前提として記載します。どの行為にどんな資格が必要かは各分野の法令で決まり、契約書では決めません。
受講者やモデルの健康状態を申告してもらうとき、同意は必要ですか?
病歴などは要配慮個人情報に当たり得ます。個人情報保護法は、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはならないと定めています(20条2項)。申告書に、取得と利用目的への同意、必要な範囲で立会者や搬送先に提供することへの同意を兼ねさせると整理しやすくなります。モデルが未成年なら、法定代理人の同意も必要です。
講師が資格者のとき、講習の案内に講師の勤務先を載せてよいですか?
載せ方によります。勤務先の所在地や電話番号、リンクを載せると、その勤務先の広告と見られる可能性があります。媒体ごとに載せる事項を分け、称号の表示は載せる前に確認し、講師紹介に載せる事項を講師に確認してもらう書面を用意しておくと安全です。広告に当たるかどうかの判断は講師の職業に関するルールによるため、主催者は確認の仕組みを整える役割にとどまります。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた資格スクール・養成講座の受講契約書、講座利用規約、認定講師規約、商標・ブランドガイドライン、協会の会員規約、上位講師の退任合意書、講師業務委託契約書、法人向け講座の規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)