このページの要点
- 修了証は認定証ではなく、修了だけでは指導や認定表示の権限は生じない、と明記する。
- 修了の要件は出席率・指定動画の視聴・課題の提出のように数字と期限で書く。言葉を変えたら定義の場所を確かめる。
- 「異議は申し立てない」ではなく、計算違いなど事務上の誤りの照会は受け付けて訂正する、と書く。
- 受験期限・再試験の期間・合格の持越しを決め、期限を過ぎた人には学び直しの講座での救済を置く。
結論:「修了」と「認定」を分け、試験のルールを先に書く
養成講座の書類で最初に決めたいのは、「修了」と「認定」が別のものだということです。修了は、講座を所定のとおり受け終えたこと。認定は、その人が講師として教えてよいと事業者が認めることです。この二つが混ざっていると、修了証を受け取った人が「もう教えてよい」と考えたり、試験に落ちた人が「修了したのだから認定されるはず」と主張したりします。
事務所が作成した認定講師規約では、修了の判定は事業者が行い、修了者に修了証を交付するとしたうえで、「修了証は認定証ではなく、修了のみでは第三者への指導又は認定表示の権限を生じない」と明記しました。そのうえで、修了の要件、認定試験の内容と合格基準、合否の通知、異議の扱い、再試験の期限と費用、期限を過ぎた人の救済、認定の付与の手続を、順番に条文にしています。このページではその順に解説します。認定後の更新は有効期間・更新・年会費、取消しは認定の停止・取消しのページで扱います。
修了から認定までの流れ(事務所の認定講師規約の例)
- 修了の判定出席率・動画の視聴・課題の提出の要件を満たしたかを事業者が判定し、電子メールで通知
- 最初の受験修了の通知から1年以内に、最初の認定試験を受ける
- 合否の通知受領の完了から14日以内に電子メールで通知。不合格なら取り組む課題を伝える
- 再試験最初の不合格の通知から1年以内。不合格の試験だけ受け直す
- 認定の付与面談・署名・ガイドラインへの同意の確認・年会費の請求を経て、通知した認定日から効力
期限を過ぎた人は、有料の学び直しの講座(リフレッシャー講座)を修了すれば合格として扱う救済を置いています。
修了の要件は、数字と期限で書く
修了の要件があいまいだと、修了の判定そのものが争いになります。登録商標のメソッドを教える講師養成講座のレビューでは、出席率・課題の提出・評価の基準が不明確であることを指摘し、「全8回のうち7回以上出席し、課題の提出と評価の基準を満たすこと」のように骨子を数字で書くことを提案しました。
事務所が作成した認定講師規約では、修了の要件を次の3つとし、全部を満たすことを求めました。
- ライブ講座の出席率が80%以上であること。
- 事業者が修了の対象として指定したアーカイブ動画を全て視聴していること。
- 事業者が指定した宿題と課題を期限内に提出していること。
あわせて、出席の算定方法、対象の動画、課題と提出期限は、受講開始時か課題の提示時に案内すると定め、アーカイブ動画の視聴は、事業者が個別に認めた場合を除きライブ講座への出席の代わりにならない、と書きました。オンライン講座では「録画で見たから出席扱いにしてほしい」という申出がよくあるためです。
受講者向けの規約の側でも、修了の定義が問題になったことがあります。ある制度の要件を「修了」に改めた際には、その「修了」の客観的な基準を規約の中で定める必要があるため、「全ての動画コンテンツの視聴を完了し、かつ、提出期限までに提出した課題の全てについて添削を受けたこと」という定義をあわせて置きました。要件の言葉を変えたときは、その言葉の定義がどこにあるかを必ず確かめます。
国家資格者向けの技術講習の受講規約では、修了を「全日程の受講と試験の合格」としたうえで、振替ができなかった日や受講の停止期間で「受講済みとして取り扱われる部分」は、修了の要件の受講には算入しない、と定めました。精算の便宜で受講済み扱いにした部分と、実際に学んだ部分を分けておく書き方です。
認定試験の内容と合格基準
試験の中身をどこまで規約に書くかは、事業者の判断が分かれるところです。事務所の認定講師規約の例では、依頼者の意向で評価項目と配点は規約に書かず、代わりに合格基準(割合)と評価の観点を書きました。
規約に書いた試験の要素(例)
試験の構成
- 一次
- 理論に関する筆記試験
- 二次
- 実技試験。オンラインで試験官の前で行うか、指定の課題の動画を提出する
合格基準と観点
- 基準
- 一次・二次それぞれ満点の80%以上
- 観点
- 技能を適切に使えるか、その内容を相手に伝えられるか
通知
- 時期
- 試験又は提出物の受領の完了から14日以内
- 方法
- 電子メール。不合格の詳細な採点理由は開示しないが、再試験に向けた課題は通知する
提出動画の課題は、事業者が権利を持つ素材に限りました。合格者の動画を宣伝に使うときの権利処理を見越した設計です。
ほかの案件でも、観点の書き方にはいくつかの型があります。認定講師養成講座の受講契約では、技術の水準・再現性・理解度・指導の能力・理念の理解・講師としての適性を総合的に考慮する、としました。国家資格者向けの技術講習では、試験の内容の概要と合格基準をあらかじめ受講者に示すことを条文にしています。基準を変える場合は試験の前に告知する、という一文も、不意打ちを防ぐために入れておきたいところです。
不正行為の扱いも決めておきます。他人による受験、提出物の盗用、成績や履歴の偽造が認められたときは、その試験を無効とし、すでに認定していれば取消しの手続で扱う、と書いておけば、発覚が認定の後になっても対応できます。
試験の日程を事業者の都合で変えたり中止したりする場合の扱いも、受験者の側から見れば重要です。再試験料を受け取っている回を事業者の事情で実施できないときは、本人と協議して振替を行い、振替ができなければその回の再試験料を返す、と書いておけば、受験者に不利益を押しつけない制度であることを条文で示せます。
「異議は一切申し立てない」は書かない
依頼者原案や見本の書式には、「審査の結果に異議を申し立てないものとします」という一文がよく入っています。認定講座のレビューでは、この文言は無効とされるリスクが極めて高いとして削除を勧め、「合理的かつ客観的な基準に基づき審査を行う」という事業者側の約束に置き換えることを提案しました。
改訂の例 審査結果への異議(認定講座のレビューの提案)
異議の扱い
「結果に異議を申し立てないものとします」という一文が置かれていました。
この一文を削除し、「主催者は、合理的かつ客観的な基準に基づき審査を行う」という事業者側の約束に置き換えることを提案しました。
ねらい異議を一切封じる文言は、無効とされるリスクが極めて高いと評価しました。封じるのではなく、審査の基準の側を約束するほうが、制度の信頼につながります。
事務所が作成した認定講師規約では、さらに踏み込んで、照会できる範囲を書きました。
- 当社は、試験又は必要な提出物の受領の完了後14日以内に、電子メールで合否を通知します。不合格の詳細な採点理由又は審査資料は開示しませんが、再試験に向けて取り組むべき課題を通知します。
- 審査の専門的判断に対する独立の異議申立制度は設けません。ただし、採点の計算違い、受領記録の誤りその他の事務上の誤りに関する照会を妨げず、当社は確認した誤りを訂正します。法令に基づく権利の行使を制限するものではありません。
専門的な判断のやり直しを求める手続までは用意しない一方で、計算違いや記録の誤りまで封じるのは行き過ぎです。照会できる範囲と、事業者が訂正する約束を書きました。
別の受講契約では、「異議の申立てはできない。ただし採点の誤り・明白な事実誤認は除く」という形にしています。どちらの書き方でも共通するのは、「何も言えない」状態を作らないことです。不合格の理由を詳しく開示しない運用でも、「再試験に向けて取り組むべき課題は通知する」と書いておけば、受験者にとって次に何をすればよいかが分かり、異議の申出そのものが減ります。
受験期限・再試験・合格の持越し
修了したまま何年も受験しない人、何度も不合格になる人をどう扱うかは、ヒヤリングで最も時間をかけるところです。認定制度を立ち上げた案件では、次のように詰めました。
| 項目 | 定め |
|---|---|
| 最初の受験期限 | 修了の通知から1年以内に最初の認定試験を受ける |
| 再試験の期間と回数 | 最初の不合格の通知から1年以内なら、次に実施する試験日に受験でき、回数の上限はない。その後に不合格になっても1年は延びない |
| 受け直す範囲 | 一次・二次のうち不合格の試験だけ。一方だけ合格した人は、その合格を合格の通知から1年まで持ち越せる |
| 再試験料 | 1回目は無料、2回目以降は1回ごとに定額。割引は設けない。事業者の事情で実施できないときは振替、振替ができなければ返金 |
| 申込み・変更・欠席 | 受験日の7日前までに申込みと支払。2日前までの連絡で1回に限り無料で変更。それ以後の取消しと無断欠席は1回受験した扱い。病気・けが・忌引などは当日の連絡でも変更できる |
| 事情の確認 | 変更の事情を確認できる資料を求められるが、診断書その他の要配慮個人情報を含む資料は除く |
最後の行には理由があります。病気を理由にした変更を認める以上、確認の資料を求めたくなりますが、診断書は要配慮個人情報(病歴などを含み、取得に本人の同意が必要な個人情報)を含みます。受験日の変更のためにそこまで求める必要はないので、確認の資料から外しました。
ほかの案件の例も挙げます。認定講師養成講座の受講契約では、不合格の科目の再受験を1回ごとの定額とし、契約期間の満了後も制度が続く限り受験できる、と定めました。ただし修正版で、「合格しただけでは活動もブランドの表示もできず、ライセンスの更新手続の完了が必要」という一文を加えています。受講契約の期間が終わった後に合格した人が、更新の手続を経ずに名乗り始めるのを防ぐためです。
期限を過ぎた人の救済と、認定の付与の手続
受験期限や再試験の期間を設けると、期限を過ぎた人を一律に「最初からやり直し」にするかどうかが問題になります。認定制度を立ち上げた案件では、次のいずれかに当たる人は、試験を受け直す代わりに、有料の学び直しの講座(リフレッシャー講座)を修了すれば、一次・二次とも合格したものとして扱う、としました。
- 修了の通知から1年以内に、一度も受験しなかった人
- 最初の不合格の通知から1年以内に、合格しなかった人
- 一方だけ合格し、その合格の通知から1年以内に、もう一方に合格しなかった人
あわせて、事業者の事情で試験を実施できなかった期間は、これらの1年に算入しない、と加えました。これは依頼者の回答にはない事務所からの提案で、採否を確認する事項として示しています。事業者の都合で受験の機会がなかったのに期限だけが進む、という不公平を防ぐためです。
- 当社は、修了し、認定試験に合格した個人について、面談を実施し、本書への署名、ガイドライン及び行動規範への同意を確認し、年会費の請求を行った上で、認定を付与します。
- 認定の効力は、当社が電子メールで通知する認定日から生じます。試験の合格のみ、面談のみ又は年会費の請求のみをもって、認定を取得したものとは扱いません。
- 法人又は団体の名義による認定は行いません。法令上、契約の締結に法定代理人の同意を要する者については、当社はその同意を確認してから手続を進めます。
年会費は認定日から1か月以内に支払うものとし、未払いの扱いは停止・取消しの条によります。
認定の対象をどこまで広げるかも、この条で決めます。この案件では、日本の外に住む個人も認定の対象とし、法人・団体の名義の認定はしない、契約の締結に法定代理人の同意が必要な人(未成年者など)については、その同意を確かめてから手続を進める、としました。未成年者が認定講師として生徒と契約するような場面は多くありませんが、受講は認めているのに認定の段階で扱いが決まっていない、ということがないよう、入口の条で手当てしておきます。
手続を書いておくのは、「合格した」「面談をした」「請求書が届いた」というそれぞれの時点で、本人が認定を受けたと思い込むのを防ぐためです。発行する証書の名義と中身にも注意が要ります。国家資格者向けの技術講習の案件では、依頼者が実際に発行していたディプロマ(修了の証書)が、提携先の名義で「認定技術者としての活動を認定」と書かれていた一方、規約には「証書は資格を付与しない」とあり、両者が矛盾していました。規約の側で認定を正面から定め、発行の名義を「当方又は当方が提携する事業者の名義」と書き直しています。規約だけでなく、実際に渡している証書の文言まで確かめることが大切です。
表示の面でも、合格と認定の間の時期を手当てしておきます。事務所が作成したブランドガイドラインでは、「試験の合格者でも、認定の効力が生じるまでは認定講師と表示しない」と定め、受講中の人や修了したが未認定の人が使える文字表示を別に決めました(名称・ロゴのガイドライン)。合格の通知を受け取った日に名刺やSNSのプロフィールを書き換える人は少なくありません。規約の認定の付与の条と、ガイドラインの未認定者の表示の条をそろえておけば、「いつから名乗ってよいのか」に一つの答えを出せます。また、試験の結果と受講料の関係(不合格でも受講料は返さない、事業者の都合で試験を実施しなかったときは返す)は、受講契約の側で定めます(養成講座の受講契約)。試験の条と受講料の条が別の書類にある場合は、互いに矛盾しないかを確かめます。
試験の動画と認定証:審査の同意と宣伝の同意を分ける
実技試験を動画の提出やオンラインの実演で行う講座では、受け取った動画をどう扱うかを決めておく必要があります。合格者の動画を公式サイトで紹介したい、という希望はよくありますが、受講者向けの規約に「受講者の提出物を広報に無償で利用できる」という包括的な許諾があっても、それだけで試験の動画を宣伝に使うのは避けたいところです。
事務所の認定講師規約では、試験で受け取った動画は審査と認定事務に使うとしたうえで、宣伝への利用は、受講者向けの規約の包括的な許諾にかかわらず、認定への同意とは別の任意の同意を得て行う、と定めました。主な内容は次のとおりです。
- 宣伝に使う範囲は、公式サイトと公式SNSへの掲載に限る。同意はフォームでの確認か電子メールでの了承で足り、期間は定めない。
- 本人が希望したときは、事業者が管理する媒体から速やかに削除する(第三者がすでに保存・共有したものは除く)。失効や取消しのときは宣伝への利用をやめる。
- 同意しないことを、認定で不利益に扱わない。
- 宣伝への利用に同意のない動画は、合否の通知から1年間保存した後に削除する。動画を見られるのは審査を担当する講師と事務局に限り、講師は秘密保持の義務を負う。
- 動画に本人以外の人(生徒など)が映る場合は、本人がその人(未成年者なら保護者も)の同意を得てから提出する。
依頼者がすでに用意していた試験動画の同意フォームについても、勧誘のように読める文の削除、不合格のときは掲載しないこと、素材の権利の確認について修正を助言しました。審査のために出した動画が、知らないうちに広告に使われていた、という不信は、制度への信頼を一度に損ないます。
認定証の条も、短くてよいので置いておきます。同じ規約では、氏名、称号、認定番号、認定日、有効期限、発行者を記載した認定証を電子ファイルで交付し、再送と氏名の変更による訂正は無料、再発行しても有効期限は延びない、と定めました。さらに、認定証、認定番号、称号、アカウント、教材へのアクセス権を、第三者に譲渡・貸与・担保提供したり、共同で使ったりしてはならない、としています。認定は個人に与えるものなので、仲間内で認定証やアカウントを使い回すことを明文で禁じておきます。
ヒヤリングの問いと理由 試験と認定の手続
認定の要件は、修了と試験の合格だけですか。出席率、課題、倫理の誓約、年齢、認定料などの要件はありますか。
要件の一覧が、そのまま認定の付与の条と、受講者への説明になります。
修了の基準(ライブの出席回数、課題、アーカイブでの代替の可否)と、判定する人・時期・通知の方法を教えてください。
修了の条を数字で書くためです。
試験の形式、審査項目、配点、合否の基準、審査員の人数と資格を教えてください。評価の基準表があれば添付してください。
規約にどこまで書くかを決めるためです。配点を書かない場合も、合格の基準と観点は書くことを提案しています。
合否の通知方法と時期、不合格の理由の開示、異議の扱いを教えてください。
「異議は申し立てない」だけで終わらせず、照会と訂正の範囲を決めるためです。
再試験の費用、受験の期限、回数の上限、受け直す範囲、不合格のときの返金を教えてください。
受験期限と救済の仕組みを組み立てるためです。
認定証の形式(電子ファイル・紙・デジタルバッジ)、記載事項、再発行の可否と費用を教えてください。認定講師の名簿を公表しますか。
認定証の条と、公式サイトへの掲載の同意の取り方を決めるためです。
よくあるご質問
修了証と認定証は、何が違うのですか?
修了証は講座を受け終えたことの証明で、認定証は講師として教えてよいと事業者が認めた証明です。規約には「修了証は認定証ではなく、修了のみでは第三者への指導や認定表示の権限を生じない」と明記しておくことをお勧めします。
試験の結果に「異議を申し立てない」と書いてもよいですか?
一切の異議を封じる文言は無効とされるリスクが高いため、お勧めしていません。専門的な判断のやり直しまでは求められないとしつつ、計算違いや記録の誤りの照会は受け付けて訂正する、という書き方が考えられます。
再試験料を取っても問題ありませんか?
受験者が任意に申し込む再試験の実費相当の手数料は、契約の解除に伴う違約金ではないため、消費者契約法9条1項1号の対象外と整理しています。対価のある手数料であることを規約に書いておきます。
受験しないまま何年も経った修了生は、どう扱えばよいですか?
最初の受験期限(例えば修了の通知から1年)を定め、期限を過ぎた人には学び直しの講座の修了で合格扱いにする、といった救済を置く方法があります。事業者の事情で試験を実施できなかった期間は期限に算入しない、と加えておくと公平です。
試験に合格したら、すぐに認定講師と名乗ってよいのですか?
規約の定めによります。事務所が作成した規約では、合格の後に面談・署名・ガイドラインへの同意の確認・年会費の請求を経て、事業者が通知する認定日から効力が生じるとしています。合格だけでは認定講師と表示できない、と書いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた資格スクール・養成講座の受講契約書、講座利用規約、認定講師規約、商標・ブランドガイドライン、協会の会員規約、上位講師の退任合意書、講師業務委託契約書、法人向け講座の規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)