スクールの合格保証・全額返金保証・満足保証は、規約にどう書くか

保証は受講者を安心させる約束ですが、条件や手続が曖昧だと、約束を守らなかったと受け取られる原因になります。

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このページの要点

  • 合格保証・全額返金保証・満足保証は約束の中身が別物なので、条を分けて書く。
  • 合格保証の条件は「誠実に受講する」ではなく、出席・課題・受験などを数字と期限で書き、失効は事業者の判断だけに委ねない。
  • 「全額返金」と表示するなら控除をせず、控除するなら返金額と内容を広告の近くに示す。
  • 「成果を保証しない」の免責条と保証の条の優先関係を書き、広告・説明会の言い方を規約と一致させる。

結論:「合格保証」「全額返金保証」「満足保証」は、名前が違うだけで中身が別物です

資格スクールや養成講座の募集ページには、「合格保証」「全額返金保証」「満足保証」といった言葉が並びます。結論から言うと、この三つは約束する中身が違い、書類に書くべき事項も違います。共通するのは、保証は受講者に有利な約束であると同時に、条件や手続を曖昧に書けば「約束を守らなかった」と受け取られやすい、という点です。広告で大きく打ち出した保証が、規約の中では条件だらけでほとんど使えない、という食い違いが、最も多いトラブルの種になります。

設計の順序は、①何を約束するのか(返金か、受講期間の延長か、再受験料の負担か)、②約束が発動する条件、③条件を満たさなかった人の扱い、④いつまでに・どこへ・どうやって申し出て、いつ・いくら戻るのか、⑤広告と規約の言い方をそろえる、です。このページでは、資格スクール・養成講座に固有の論点を中心に、この順で説明します。返金そのものの一般的な設計は養成講座の受講契約:返金・中途解約・勧誘、修了や認定試験のルールは資格スクールの規約で決める修了と認定試験で扱っています。ここでは、それらに「保証」という上乗せの約束を重ねるときの問題に絞ります。

三つの保証の違い(よくある型)

合格保証

約束の中身
条件を満たして受験したのに不合格のとき、返金・延長・再受講・受験料の補填などを行う
発動の引き金
試験の結果。受講者の取組みを条件に含めることが多い
争いの中心
条件を満たしたか、「合格」とは何か、いつまでに申し出るか

全額返金保証

約束の中身
申出の期間内なら、受講料を全額(または控除額を明示して)返す
発動の引き金
受講者の申出。理由を問わない型と、限る型がある
争いの中心
期間の数え方、申出の方法、本当に「全額」か

満足保証

約束の中身
満足できなかったとき、返金や代替の講座で応じる
発動の引き金
受講者の「満足できない」という評価
争いの中心
満足の基準、申出の期限、対象の範囲

三つを「保証制度」の一文にまとめると、条件や手続が混ざります。名前ごとに条を分けるのが基本です。

保証は法律上、どういう約束なのか

合格保証は、「合格しなかった」という条件が成就したときに返金などの義務が生じる約束です。一定の事実が起きたときに初めて効力が生じる約束を、停止条件付きの約束といいます。民法127条1項は、停止条件付法律行為は停止条件が成就した時からその効力を生ずる、と定めています。条件の中身(何をもって不合格とするか)と、条件を満たしたことを誰がどう確認するかが、保証の価値のほぼ全てを決めます。

全額返金保証は、契約で受講者に解除権を与えるものと整理できます。民法540条1項は、契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は相手方に対する意思表示によってする、と定め、545条1項は、解除権を行使すれば各当事者は相手方を原状に復させる義務を負う、と定めています。受講者が申し出れば契約が終わり、事業者は受け取った金銭を戻す構造です。「何を戻すのか」「提供済みの教材はどうするのか」を書かないと、全額返金のはずが控除の有無で揉めます。

合格保証では、「合格」の定義と、保証の対象になる条件をどう書くのか

合格保証で最初にぶつかるのは「合格」の定義です。受験する試験は、公的な枠組みで実施される試験(事業者が結果に関与できない)、他の団体が実施する検定、スクール自身が実施する認定試験の三つに分かれ、書き方が違います。

試験の性質ごとの「合格」の書き方
試験の性質「合格」の書き方注意したい点
公的な試験・他団体の試験「実施団体が公表する合格者の発表をもって合格とする」結果を事業者が左右できないため、受験したことと不合格だったことを示す資料を受講者が出す手続が要る
スクールが実施する認定試験合格基準を規約や実施要項に書き、基準をあとから変えない旨を書く合否を自社が決めるので、基準の透明性が保証の信用を左右する
スクール内の修了判定出席率や課題の提出など「修了」の客観的な基準を書く修了と合格を混ぜない。修了しても資格や認定が得られるわけではない

一つの講座に複数の種類が混ざることも多いため、どの試験の合格が保証の対象かを保証の条に明記します。

自社の認定試験を保証の対象にするときは、合否を決める人と保証を負担する人が同じなので、「基準を厳しく運用すれば保証を免れられるのではないか」という疑いを受けやすくなります。合格の基準(割合)と評価の観点を書き、基準を変える場合は試験の前に告知する、という一文を入れておく例があります(修了と認定試験のページ参照)。

条件は、数字と期限で書く

保証には受講者側の条件が付くのが普通です。多い失敗は、条件を「誠実に受講すること」「真摯に取り組むこと」と抽象的に書くことです。不合格のたびに「取組みが足りなかった」と評価できる余地が残り、保証が空洞になります。条件は測れる形にします。

  • 出席:ライブ講義の全回数のうち何回以上か(録画の視聴を出席に数えるかも書く)。
  • 課題:指定した課題の提出状況と提出期限。提出を受け付けた記録の残し方。
  • 模擬試験:何回、いつまでに受けるか。点数を条件にするのか、受験したことだけを条件にするのか。
  • 受験:保証の対象とする試験の回、受験の期限、申込みと受験料の支払は誰が行うのか。
  • 申出:いつまでに申し出るか。合格発表の翌日から数えるのか、結果通知の到達から数えるのか。

条件を並べるほど対象者は絞られ、広告で見せた保証と実際の対象者がずれます。実務で見かける売上保証型の契約には、初回説明会の受講、指定サポートの利用、毎月の報告、指定ツールの使用、一定件数への到達など八つ前後の条件を全て満たした人にしか保証を適用しない型があり、「心理的な安心にとどまり、実際に使える場面が少ない」と評価されます。条件を一つ足すたびに、その条件が合格の可能性と本当に関係するかを問い直します。

合格保証で選べる救済の型
救済の型内容設計で決めておくこと
全額返金受講料を返す決済手数料や提供済み教材の控除、返金の期限と方法、受験料など別の費用の扱い
一部返金受講料の一定割合を返す「全額」と誤認されない表示。割合の根拠
受講期間の延長無償で一定期間、講義や質問対応を続ける期間の上限、自動更新にしないこと、延長中に再度不合格だったときの扱い
再受講次期の同じ講座を無償で受けられる対象の期の範囲、教材の改訂版の扱い、回数
受験料の補填再受験の費用を事業者が負担する対象とする回数、上限額、領収書等の確認方法

救済を組み合わせるときは、受講者が選ぶのか事業者が選ぶのかを書きます。選択権があいまいだと、不合格後に希望する救済をめぐって揉めます。

条件を満たさなかった人は、どう扱うのか:事業者の判断で保証を外せる書き方の問題

保証には失効の定めが付きます。問題は、失効の理由を「不適切な運用があったとき」「事業者が不適当と判断したとき」と抽象的に書くことです。そう書くと、不合格という成果が出なかったこと自体が「運用が不適切だった」証拠のように扱われ、保証が使われるはずの場面で保証が外れてしまいます。実務では、八つの条件を満たした人にだけ保証を適用し、否認の理由を「不適切運用」とだけ書いた契約について、事業者の広い裁量が問題とされ、「書面で具体的な内容を通知し、30日以上の是正期間を置いても是正されなかった場合」に限る、という修正が提案されています。

民法130条1項は、条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる、と定めています。保証の場合、条件の成就(不合格)で不利益を受けるのは事業者です。条件を満たした受講者を「不適切」と評価して保証を外せば、条件が成就したとみなされる主張を受ける余地が出ます。失効の事由を具体的にしておくことは、事業者を守る意味でもあります。

書き方の例 保証の失効の書き方

失効の事由

よくある書き方事業者が書いた原案

「不適切な運用があったと当社が判断した場合、保証は適用しない。受講者は異議を述べない。」

整えた書き方

「次のいずれかに該当し、当社が書面で具体的な内容を通知して14日以上の期間を定めて是正を求めたにもかかわらず是正されなかったときは、保証を適用しません。(1)保証の条件を満たさなかったとき(2)教材の複製・第三者への提供など禁止事項に違反したとき(3)受験の申込みを期限までにしなかったとき」

ねらい「判断」ではなく具体的な事由を挙げ、通知と是正の機会を挟みます。いきなり失権させない二段構えにすると、恣意的だと言われにくくなります。

理由の説明と確認

よくある書き方事業者が書いた原案

保証を適用しない場合の理由の説明が定められていない。

整えた書き方

「適用しない場合は理由を書面又は電子メールで通知します。疑問があるときは、通知の到達から30日以内に理由の確認を求めることができます」

ねらい「異議を述べないものとする」という一文は、消費者契約法10条の問題を呼び込みます。確認の窓口を残したほうが紛争は小さくなります。

条件の充足の判定も、客観的な記録に置きます。売上保証型の契約では、判定を事業者の提出データや第三者のシステムの記録など客観的な証拠に基づいて行うよう改める整理がされています。合格保証でも、受験したこと、合格発表の結果、出席や課題の提出は、記録で確認できる形にします。

返金を受けたうえで教材を他人に渡す、全回分の動画を保存してから返金を申し出る、といった濫用への備えも要ります。禁止事項に違反したときは保証の対象外とする定めには合理性があります。ただし「教材やアカウントに一度でもアクセスしたら返金を受ける権利を失う」という広い書き方は避けます。中身を確かめるにはアクセスが必要な講座で、アクセスしたことを理由に保証を失わせれば、保証は実質的に使えません。大量の保存、複製、共有といった濫用に当たる行為に限定します。

合格保証の申出から救済までの流れ(例)

  1. 合格発表対象の試験の結果が公表される。必要な資料を案内する。
  2. 申出受講者が期限内に、定めた方法で適用を申し出る。
  3. 条件の確認出席・課題・受験の記録を照合し、結果を通知する。
  4. 是正の機会不足があれば、何をいつまでに示せばよいかを通知する。
  5. 救済の実施返金なら期限内に振込、延長なら開始日を通知する。

各段階の日数を書いておくと、今どの段階にいるかを双方が判断できます。

全額返金保証は、期間・手続・返金額をどう決めるのか(計算例つき)

実務で見かける書き方に、「決済日から3日以内に、事業者の指定するチャット宛に申請すれば、受講料から決済手数料を差し引いた額を返金する。申請があった時点で講座の提供を停止できる」という型があります。この型には四つの論点が重なっています。

  1. 期間が短く、数え方が書かれていない。決済日が日曜日のとき、3日以内の最終日はいつか。
  2. 申請先が一つのチャットサービスだけで、使えない人の扱いが書かれていない。
  3. 「全額返金保証」と呼びながら、決済手数料を引いて返しており、広告の「全額」と実際に戻る額がずれる。
  4. 申請の時点で提供を停止できるとしており、返金の手続中にどこまで講座を使えるかが決まらない。

これに対し、「契約の日から8日以内で、かつ初回の提供(面談や教材の閲覧)をまだ受けていないこと」を条件に、任意の撤回を認める型もあります。保証の範囲が小さい代わりに、制度の目的(申込み直後の迷いに応える)と範囲が合っています。講座の性質に合った範囲かどうかを見ます。

返金額と表示のずれを、数字で確かめる

次は仮の数字の計算例です。受講料が300,000円(税込の総額)、決済手数料が受講料の4%、返金の事務手数料として5,000円を控除する設計だとします。

返金額の計算例(仮の数字)
設計計算戻る額広告での書き方
手数料を控除する300,000円 − 12,000円(300,000円×4%)− 5,000円283,000円「全額返金」とは書けない。控除の内容を近くに書く
決済手数料のみ控除300,000円 − 12,000円288,000円「決済手数料を除き返金」と書く
控除なし300,000円300,000円「全額返金」と書ける

「全額」と書くなら控除をしないか、控除の内容を広告の近くで見えるようにします。

期間の数え方も確かめます。申出の期限を「合格発表の日の翌日から30日以内」とし、発表が12月20日なら、12月21日が1日目で、30日目は翌年の1月19日です。初日を算入するか、期限が休日のときはどうなるかを書いておけば、遅れたか否かの争いが減ります。

法定の制度と、保証の関係

任意の返金保証を設けても、法律の制度は残ります。特定継続的役務提供のうち、学習塾・語学教室・パソコン教室などに当たる講座には、クーリング・オフ(特定商取引法48条)と中途解約(同法49条)の規定があります。学習塾・語学教室・パソコン教室は、期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるものが対象です。保証を設けても、法定の扱いを下回る設計にはできません。

それ以外の資格スクール・養成講座でも、保証の期間が過ぎたあとの解約で全額を保持する書き方には、消費者契約法9条1項1号の問題があります。同種の契約の解除で事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効だからです。保証の期間内は全額が戻り、過ぎたとたんに「一切返さない」では段差が大きすぎます。期間後は提供済みの段階に応じた精算にして、つなぎます(養成講座・認定講師規約の違約金参照)。

任意の返金保証が、キャンセル規定と二重になる点にも注意します。申込みから8日間は理由を問わず全額返金とし、さらに開講前の日数に応じたキャンセル料の表も置くと、短期の講座では保証の期間内に講座が終わってしまい、キャンセル料の表が働きません。どちらが優先するかを条の冒頭に書きます。返金の方法も、カード決済や分割払いでは現金の振込ではなくカード会社を通じた取消しになる場合があるため、支払方法ごとに書き分けます。

満足保証の「満足」は、誰がどう決めるのか:成果を保証しない条項との同居

満足保証は、三つの中で最も設計が難しい制度です。「満足」が主観だからです。事業者には返金の申出がどこまで広がるかが読めず、受講者には「満足できない」と主張しても「そこまでではない」と言われれば終わりかもしれない、という不安が残ります。工夫は、主観を残したまま、申出の仕方で客観化することです。

  • 対象の範囲:最初の数回(またはお試しの期間)までに申し出た場合に限る。
  • 申出の形式:理由を定めたフォームに書いて申し出る。理由の内容は審査しないが記録に残す。
  • 返金の範囲:対象の範囲までに提供した部分の対価は控除しない代わりに、追加の特典は返金後に使えなくなる。
  • 再申込み:返金を受けた人が同じ講座に再度申し込んだ場合は、保証の対象外とする。

「理由を審査しない」と決めておくのが、満足保証を機能させる要点です。理由を審査すると、事業者が「満足できないことに理由がない」と判断するたびに紛争が生まれます。審査しないのが怖いなら、対象の範囲を狭め、期間を短くするほうが筋が通ります。

「成果を保証しない」と「保証する」を同じ規約に書くと

資格スクールの規約の多くは、免責の条に「いかなる成果も保証しない」と書きます。講座は結果の完成ではなく講義や指導という事務の遂行を約束する準委任に近い性質のものなので、この条項自体は必要です。ところが、同じ規約に合格保証や返金保証の条が入ると、二つが衝突します。

書き方の例 成果を保証しない条項と、保証制度の整合

免責の条との衝突

よくある書き方事業者が書いた原案

「資格取得その他いかなる成果も保証しない」と書いたうえで、別の条に合格保証を置いている。

整えた書き方

免責の条に「ただし、第○条(合格保証)及び第○条(返金保証)に定める場合を除く」と加える。

ねらい保証の条があるのに「規約上は保証していない」と主張される事態を防ぎます。

返金を一切認めない条

よくある書き方事業者が書いた原案

「成果が得られなかったことを理由とする解約・返金・損害賠償には一切応じない」

整えた書き方

「成果が得られなかったことのみを理由とする解約・返金は、保証の条による場合を除き認めません。当社の責めに帰すべき事由による場合は、この限りでない」

ねらい「一切」と書くと保証の条や法律上の返金義務と食い違います。債務不履行で生じた損害の賠償責任を、すべて負わないとする条項は、消費者契約法8条1項1号により無効です。

責任の上限を設けるときも注意します。消費者契約法8条3項は、軽過失による債務不履行の責任の一部を免除する条項で、重過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものを無効とします。上限を設けるなら、「当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」を、上限を定めるその一文の中に書きます。

勧誘や広告で保証をどう言うか:条件を小さく書くと、取消しや表示の問題になる

規約で条件を細かく書いていても、広告や説明会で条件に触れずに「全額返金保証」と打ち出せば、問題は規約の外で起きます。三つの法律の考え方を押さえます。

第一は、消費者契約法4条の取消しです。事業者が勧誘に際し、重要事項(役務の内容や対価その他の取引条件)について事実と異なることを告げ、消費者が誤認して契約したときは、取り消すことができます(同条1項1号)。実際には条件が多く適用が難しい保証を「誰でも返金を受けられる」と説明すれば、不実の告知に当たるおそれがあります。保証という有利な旨を告げながら、「対象は事実上限られる」という不利益な事実を故意又は重大な過失で告げなかったときも、取消しの対象です(同条2項)。取消権は、追認をすることができる時から一年間、契約の締結の時から五年間行使できます(同法7条1項)。

就職や進学といった事項について、社会生活上の経験が乏しいことから過大な不安を抱いている消費者の不安をあおり、合理的な根拠がないのに講座が必要だと告げる勧誘は、同法4条3項5号により取消しの対象になり得ます。「この資格がないと就職できない」「保証があるから安心して」という説明を若い受講者にする場面では、特に慎重にします。

第二は、景品表示法の有利誤認表示です。価格その他の取引条件について、実際のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示は禁止されています(同法5条2号)。「全額返金保証」と打ち出しながら多くの控除や条件があれば、問題になり得ます。品質や内容に関する不当表示は同条1号(優良誤認表示)で、合格実績や合格率の数え方は民間資格の名称と広告表示でも触れています。

第三は、断定的な言い方です。消費者契約法4条1項2号は、将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供することを取消しの対象とします。合格について「間違いなく受かる」と告げることが同号に当たるかは個別の判断ですが、保証は「合格を約束する」ものではなく「条件を満たして不合格だったときの救済を約束する」ものだ、という整理を広告文に反映します。

保証に関する広告・説明の言い方

  • 不可「合格を確約します」合格は事業者が約束できない結果で、保証の内容とも一致しない。
  • 条件付き「全額返金保証(条件あり)」とだけ書き、条件を別ページに置く保証の文言の近くに、期間・申出の方法・控除の有無の要点を書く。
  • 可「条件を満たして受験したのに不合格だった場合、受講料を返金します(条件は下記)」救済の中身と条件が一文で分かり、直下に条件の一覧がある。
  • 不可「返金保証つき」と書き、実際は多額の控除がある有利誤認表示になり得る。控除の額と内容を返金額の近くに書く。

表示のあとで規約の条件を変えた場合は、表示も同時に改めます。

実務でよく見られる失敗と直し方は、どのようなものか

書き方の例 保証制度の誤りやすい書き方と直し方

申出先と提供の停止

よくある書き方事業者が書いた原案

返金の申請先を特定のチャットアカウント宛だけにし、申請の時点で提供を直ちに停止できる。

整えた書き方

電子メール、専用フォーム、書面のうち二つ以上を定める。申出の受理後は新たな提供を停止するが、返金の完了まですでに提供した教材は閲覧できるとし、返金の完了で契約が終了する、と書く。

ねらい手段を一つに限ると、使えない人は期限を過ぎてしまいます。時点を一つにしておくと、手続中の不満も減ります。

保証の期間

よくある書き方事業者が書いた原案

合格保証の申出は「試験の後、速やかに」。

整えた書き方

「合格発表の日の翌日から起算して30日以内に申し出る」と日数で書く。

ねらい「速やかに」は、遅れたかどうかの判断が人によって変わります。

受験料と回数

よくある書き方事業者が書いた原案

受験料が受講料に含まれるのか別なのかが書かれていない。再受験でも保証が使えるのかも不明。

整えた書き方

受験料の扱い(含む・別・補填する)と、保証は最初の受験に限り適用する、又は再受験も一回に限り対象とする、を書く。

ねらい受験の申込みをしていない人に受験料の請求書が届いた、という苦情があります。受験が任意か必須か、費用が別建てかは、申込みの時点で示します。

これらに共通するのは、保証を使えるようにする修正が、事業者の保護にもなるという点です。保証を空洞にする書き方は受講者の不信を生み、広告や勧誘の適法性が争われる入口になります。認定講師を育てる養成講座で認定試験の合格を保証の条件に含めるときは、認定の付与や年会費の請求の時期を養成講座の契約書と認定講師規約の全体像の順序に合わせます。

保証を書く前に、ヒヤリングで何を確認すればよいのか

確認したい問いと、その理由 スクールの保証制度

  1. 保証の対象とする試験は何ですか(公的な試験、他団体の試験、スクールの認定試験)。

    「合格」の定義と証明方法が試験の性質で変わるためです。自社の認定試験なら、合格基準の透明性が保証の信用に直結します。

  2. 保証が発動したときの救済は何ですか(全額返金、一部返金、延長、再受講、受験料の補填)。

    救済によって事業者の負担と条文の内容が変わり、選択権が受講者側か事業者側かも決める必要があるためです。

  3. 保証の条件にしたい受講者側の行動と、その期限は。

    抽象的な条件を数字と期限に置き換え、合格の可能性と関係のない条件が混じっていないかを確かめるためです。

  4. 申出の期限と方法、返金の期限と方法(カード決済・分割払いの人を含む)は。

    期限の数え方と手段、支払方法ごとの返金方法を決めるためです。

  5. 広告や説明会で保証をどう紹介していますか。条件の一覧は見える場所にありますか。

    消費者契約法の取消しと景品表示法の有利誤認を避けるには、広告と規約が一致している必要があるためです。

  6. 保証の期間が過ぎたあとの中途解約と、キャンセル料の表はどうなっていますか。

    期間内は全額、期間後は一切返さないという段差を避け、保証とキャンセル規定の優先関係を決めるためです。

最後に条文の例を示します。保証の考え方を説明するために新しく書き起こしたもので、そのまま使えるものではありません。講座の内容、試験の性質、料金に合わせて調整します。

条文例合格保証(例)
  1. 第○条(合格保証) 当社は、受講者が次の各号の全てを満たしたうえで対象の試験を受験し、合格しなかったときは、この条に定める救済を行います。(1)ライブ講義の全回数のうち○回以上に出席していること。(2)当社が指定した課題を期限までに提出していること。(3)当社が指定した模擬試験を○回以上受験していること。(4)対象の試験を、受講期間の終了後○か月以内の回に、自ら申し込んで受験していること。
  2. 受講者は、合格発表の日の翌日から起算して30日以内に、電子メール又は当社所定のフォームにより、この条の適用を申し出るものとします。申出には、受験したことと不合格であることを確認できる資料を添えます。
  3. 当社は、申出を受けた日から14日以内に、条件を満たしているかどうかを通知します。満たしていないと判断するときは、その具体的な理由と、是正できる事項及び期間を併せて通知します。
  4. 救済は、受講者の選択により、(1)受領済みの受講料の返金、又は(2)受講期間の無償延長(○か月を上限とし、自動更新は行いません)のいずれかとします。返金は、通知の日から30日以内に、受講者が支払に用いた方法に応じて行います。
  5. 教材の複製、第三者への提供その他の禁止事項に違反した受講者に、当社が書面で是正を求めたにもかかわらず是正されないときは、この条は適用されません。この条は、当社の責めに帰すべき事由その他法令により返金等が必要な場合を妨げません。

免責の条には「ただし、第○条(合格保証)に定める場合を除く」を加え、保証の条を優先させます。

条文例全額返金保証(例)
  1. 第○条(全額返金保証) 受講者は、受講契約の成立の日から起算して14日以内に、電子メール、当社所定のフォーム又は書面により申し出ることで、理由を問わず、受領済みの受講料の全額の返金を受けることができます。期間の末日が休日に当たるときは、その翌日を末日とし、申出は当社に到達した日に効力を生じます。
  2. 当社は、返金に伴う決済手数料及び振込手数料を負担します。返金は、申出の到達の日から30日以内に、受講者が支払に用いた方法に応じて行います。
  3. 申出の到達後、当社は新たな提供を行いませんが、返金が完了するまで、すでに提供した教材は閲覧できます。返金の完了をもって受講契約は終了します。
  4. 第1項の期間内は、キャンセル料に関する第○条に優先して本条を適用します。期間の経過後の解約は、第○条(中途解約と精算)によります。

よくあるご質問

合格保証は、「合格させる」と約束することですか?

違います。合格保証は、所定の条件を満たして受験したのに合格しなかったときに、返金や延長などの救済を約束する仕組みです。合格そのものを約束するものではないため、救済の中身と発動の条件を並べて書くのが適切です。

全額返金保証と書くなら、決済手数料も戻す必要がありますか?

「全額」と表示するなら控除をしない設計にするのが基本です。決済手数料を引く設計にする場合は「全額」とは書かず、返金額と控除の内容を広告の近くに示します。表示と実際の返金額がずれると、景品表示法の有利誤認表示や消費者契約法4条の取消しの問題になり得ます。

条件を満たしたかどうかを、事業者の判断で決めてもよいですか?

判断だけに委ねる書き方は避けます。出席、課題の提出、受験などを記録で確認できる条件にし、満たさないと判断するときは理由を通知して是正の機会を設けるのが望ましいです。条件の成就を妨げて保証を外した場合、民法130条1項に基づき、条件が成就したとみなす主張を受ける余地があります。

「成果を保証しない」という免責条項と、合格保証は両立しますか?

両立しますが、規約の中で優先関係を書いておく必要があります。免責の条に「ただし、保証の条に定める場合を除く」と加えるのが一つの方法です。「成果が得られなかったことを理由とする返金には一切応じない」という書き方は、保証の条や法律上の返金義務と食い違うため改めます。

保証の期間が過ぎたあとの解約で、受講料は返さなくてもよいですか?

一律に返さない設計は、消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害を超える部分が無効になるおそれがあります。提供済みの段階に応じた精算とし、保証の期間内との差が大きくなりすぎないようにします。学習塾・語学教室・パソコン教室などに当たる講座には、クーリング・オフや中途解約の法定の規定もあります。

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本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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