このページの要点
- 中小小売商業振興法の書面交付は小売業の連鎖化が対象で、教室に当然にはかからない。ただし契約前に重要な条件を書面で説明し、記録を残す運用は必要。
- 加盟金は何の対価かを列挙し、研修の開始前・開始後・開校後で返還の条件を分ける。ロイヤリティは率と基礎を本文で決める。
- 生徒と受講契約を結ぶのは通常は教室。入金先、特定商取引法の書面、閉校時の前払い分を加盟契約の段階で決める。
- 終了後の競業と表示は、技能と体系を分け、守りたい範囲に絞る。生徒の個人データは、共同利用か委託かを選ぶ。
結論:「認定教室」「ライセンス教室」と呼んでいても、実質が加盟契約なら、加盟契約として整える
認定講師の資格を与えるだけの制度と、教室という事業そのものに本部の名称・カリキュラム・教材を使わせる制度とは、書類の重さが違います。後者は、呼び名が「認定教室」「ライセンス教室」「分室」のいずれであっても、場所と生徒を持つ事業者にブランドとノウハウの使用を許し、加盟金やロイヤリティを受け取る仕組みで、フランチャイズ(加盟)契約と同じ論点を抱えます。
このページの結論は四つです。第一に、中小小売商業振興法の契約前の書面交付と説明の義務は、小売業の連鎖化を想定した法律で、役務(サービス)が中心の教室に当然にかかるとはいえません。ただし、義務の有無とは別に、契約前に重要な条件を書面で説明し記録を残す運用が、後の争いを減らします。第二に、加盟金とロイヤリティは「何の対価か」と「何を基礎に計算するか」を本文で決めます。第三に、生徒と受講契約を結ぶのは、通常は加盟した教室の側です。受講料の入金先、前払い分、閉校したときの扱いを、加盟契約の段階で決めておきます。第四に、終了後の名称・競業・生徒の個人データは、全部を禁じる書き方ではなく、守りたい範囲に絞って書きます。
認定講師が自分の教室で教える関係を加盟契約にしない設計は養成講座の契約書と認定講師規約の全体像で、認定の名称や「認定校」の表示の線引きは認定講師の名称・ロゴのブランドガイドラインで扱っています。ここでは「教室を単位に加盟させる」場合に絞ります。
教室を巻き込む制度の三つの型と、決めること
認定講師型
- 契約の中心
- 講師個人への認定と、教材・名称の使用許諾
- 生徒との契約の相手
- 講師本人
- 決めること
- 認定の維持、名称の使い方。売上に連動する金銭や運営の指示は原則として置かない
ライセンス教室型
- 契約の中心
- 教室(個人・法人)へのカリキュラム・教材・名称の使用許諾
- 生徒との契約の相手
- 教室
- 決めること
- 使用料の基礎、教材の更新、使用できる場所と範囲、終了後の扱い
加盟教室型(フランチャイズ型)
- 契約の中心
- 名称、運営マニュアル、研修、生徒募集の支援を一式で提供
- 生徒との契約の相手
- 教室(本部が一括して収納する設計もある)
- 決めること
- 加盟金、ロイヤリティ、商圏、価格の扱い、研修義務、終了時の生徒と情報
型の間に明確な線はありません。本部が運営の方法を細かく指示し、売上に応じた金銭を受け取るほど、右の型に近づきます。
「業務提携」という名前の契約書に、「本契約はフランチャイズ契約ではない」と確認する条を置く例があります。しかし、法律や行政の判断は書類の名前ではなく実態で行われます。名前に頼らず、実態に合わせて書くほうが安全です。
中小小売商業振興法の書面交付は、教室の加盟でも必要ですか
結論から言うと、教室の加盟に同法11条の義務が当然にかかるとはいえません。同条は、特定連鎖化事業を行う者(本部)に、加盟しようとする者へ、契約を結ぶ前に事業の概要や契約の主な内容を記載した書面を交付し、説明することを義務づけています。特定連鎖化事業とは、連鎖化事業のうち、約款に「加盟者に特定の商標・商号などを使わせる」旨と「加盟の際に加盟金・保証金などを徴収する」旨の定めがあるものです。そして連鎖化事業は、同法の定義では、主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に商品を販売し(またはあっせんし)、かつ経営の指導を行う事業とされています。つまり、想定は、商品を仕入れて売る小売店のチェーンです。
教室の事業は、生徒に学習の機会という役務を提供することが中心なので、この定義に当たらない場合が多いと考えられます。ただし、当たらないと言い切ることはできません。たとえば、教室が本部から教材・機器・用品を仕入れて生徒に販売する収益が大きい場合は、小売の要素が加わります。次の問いで実態を確かめます。
- 教室の収入の中心は、生徒から受け取る受講料(役務の対価)か。それとも、本部から仕入れた物品の販売益か。
- 本部は、加盟した教室に対して、物品を継続的に販売しているか。あっせんしているか。
- 契約の約款に、名称などの使用を許す旨と、加盟金などを徴収する旨の定めがあるか。
そのうえで見落としてはならないのは、同法の義務の有無にかかわらず、加盟者を募るときの説明の仕方が、別の観点から問われることです。公正取引委員会は「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」で、本部が加盟希望者に示すべき事項と、示し方の問題点を整理しています。たとえば、加盟に際して徴収する金銭の性質・額・返還の有無と条件、ロイヤルティの額・算定方法・徴収の時期と方法、中途解約したときの違約金などを、十分に開示しているかが挙げられています。予想売上げや予想収益を示す場合は、既存店舗の実績などの根拠ある事実や合理的な算定方法に基づくことが必要とされ、開示が不十分、または虚偽・誇大で実際より有利だと誤認させる場合は、ぎまん的な顧客誘引として問題になり得ると説明されています。教室の加盟でも参考になります。
| 項目 | 教室の加盟で書くこと | 書く理由 |
|---|---|---|
| 本部の実績 | 運営の期間、教室数の推移(開校数と閉校数) | 継続できる事業かを判断する材料になる |
| 金銭の内訳 | 加盟金、研修費、教材の初期セット、保証金、更新料。それぞれの対価と返還の条件 | 「何の対価か」を後から争わせない |
| 継続して払う金銭 | ロイヤリティの率、基礎(売上か入金額か在籍数か)、締めと支払の日、教材の購入義務 | 月ごとの手取りを、加盟希望者が計算できるようにする |
| 収入の見込み | 生徒数と月謝のモデルを示す場合は、算定の根拠と、実績の範囲(平均・最少・最大) | 予想を示すなら根拠が要る。保証していない旨も併記する |
| 契約の期間と終了 | 期間、更新の条件、中途解約の方法、違約金、終了後の競業と表示の制限 | 辞めるときに負う負担を、始める前に知らせる |
| 生徒との関係 | 受講契約の当事者、受講料の入金先、閉校時の前払い分の扱い | 教室ビジネス特有の論点。加盟希望者が最も見落としやすい |
法律上の記載事項の全てを網羅する表ではありません。書面を作る際の項目の整理として使います。
加盟金とロイヤリティは、教室では何の対価か
実務で多い加盟金の条は、「加盟金は、加盟の権利、名称の使用権、研修の受講権、開校支援の対価であり、理由のいかんを問わず返還しない」という型です。対価を並べること自体は有益です。何を受けたかの争いに備えられるからです。問題は、並べた対価の中に、まだ提供されていないものがあるときです。研修が始まる前に、物件が見つからずに開校を断念した場合や、本部の側が約束した研修を実施できなかった場合まで「返還しない」と読めると、争いになりやすく、事業者間の契約であっても、行き過ぎた不返還は公序良俗(民法90条)の観点から争われ得ます。
整え方としては、返還の可否を段階に分けます。たとえば、研修の開始前、研修の開始後から開校まで、開校後の三つに分け、それぞれの扱いを書きます。次の例の金額は、説明のために置いた仮の数字です。
加盟金(仮に30万円)の返還を段階で整える例
研修の開始前に解約
- 扱い
- 開校準備のために本部が支出した実費を差し引いて返還
- 条文に書くこと
- 実費の内訳を示すこと。金額は加盟者に示した範囲に限る
研修の開始後から開校まで
- 扱い
- 提供済みの研修・教材の対価として返還しない
- 例外
- 本部が約束した研修を実施できなかった分は、その分を返還
開校後
- 扱い
- 返還しない
- 注意
- 分割払いのときは、解約時点の未払い分の扱いを別に書く
分割払いにも注意が必要です。「分割払いの途中で解約はできない」という定めと、「1か月前の通知で契約を解除できる」という定めが、同じ契約書に並ぶ例があります。この二つは衝突します。解約できるが未払い分は払うのか、研修を受けた割合に応じて払うのかを、一つの筋で書きます。
ロイヤリティは、加盟した教室が本部に継続して払う金銭です。教室で使われる主な型は、次のとおりです。
| 型 | 内容 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 在籍生徒数の定額 | 在籍する生徒1人につき月額の定額 | 休会中・体験中の生徒を数えるか。月の途中で入退会した生徒の数え方 |
| 受講料売上の割合 | 生徒から受け取った受講料(月謝・講習費)の一定割合 | 入会金・教材費・検定料を含めるか。税込か税抜か。返金をどう扱うか |
| 入金額の割合 | 実際に入金された受講料の一定割合(返金額を差し引く) | 入金の確認方法。未回収分にかけない点を明記 |
| 期間限定型(卒業型) | 一定の期間だけロイヤリティを払い、独立して自走できるようになったら終了 | 自走できたかを判断する主体と基準。判断が一方の裁量にならない書き方 |
型によって金額は変わります。仮の数字で比べます。月謝が1人10,000円(税込)、在籍20人、うち1人分の当月の月謝を返金した月です。
| 型 | 計算 | ロイヤリティ |
|---|---|---|
| 受講料売上の10% | 10,000円×20人=200,000円 200,000円×10% | 20,000円(返金を差し引かない) |
| 入金額の10% | (200,000円-返金10,000円)=190,000円 190,000円×10% | 19,000円 |
売上の割合型では、返金した月謝にもロイヤリティがかかるかが分かれ目です。条文で「返金額を差し引く」と書かない限り、割合の基礎に返金分が残ります。
ロイヤリティで最も争いになりやすいのは、率や計算の方法を本部が一方的に変えられる書き方です。たとえば「ロイヤリティの割合は別途甲が定める」「社会情勢の変化その他の合理的な理由があるときは、事前に通知して変更できる」という条です。加盟した教室は、加盟金を払い、教室を借り、講師を雇ったあとで、率の変更を受け入れるか、教室をたたむかを迫られます。本文で率を決め、変更は更新の機会に、加盟した教室の同意を得て行う書き方にすると、予測しやすくなります。売上を基礎にするなら、同時に、報告の様式と期日、虚偽や過少の申告があったときの不足額の支払い、調査に必要な範囲の資料の提出を書いておきます。
研修を受けないことへの制裁も、よく見かけます。「正当な理由なく欠席したときは1回につき違約金、2回続けばロイヤリティを増額、3回で解除」という型です。日程を一方的に決めて欠席の理由を認めない運用では、制裁だけが残ります。日程を事前に示し、やむを得ない事由の振替を認めることが前提です。違約金は賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。実際の損害も請求できる書き方を重ねるときは、違約金の額が起こり得る損害に釣り合うかを考えます。
加盟した教室の代表者に連帯保証を求める例もあります。個人が保証人になり、契約期間中に生じる不特定の債務を保証する(個人根保証)場合は、極度額(保証の上限額)を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。保証する債務の範囲と極度額を、契約書に書いておきます。
生徒と契約するのは誰か:受講料・書面・閉校時の前払い分
問題が表に出るのは、生徒から苦情や返金の求めがあったときです。生徒の目には、看板に出ている本部の名前の教室で、本部の教材で学んでいます。生徒と受講契約を結ぶのが教室なのか、本部なのかが曖昧なままだと、返金の求めを本部と教室が互いに相手に回す事態が起こります。
受講契約の当事者と受講料の流れ(三つの型)
教室が当事者
- 受講料
- 教室の口座に直接入金
- 返金・苦情の窓口
- 教室。本部は窓口ではないと明示
- 決めること
- 申込書・規約に教室の名称と所在地を書く。本部の名称は「ブランドの提供元」として示す
本部が当事者
- 受講料
- 本部の口座に入金し、本部が教室に分配
- 返金・苦情の窓口
- 本部
- 決めること
- 教室は運営の受託者。分配の率、閉校時の引継ぎ、教室の過失による損害の負担
本部が一括収納
- 受講料
- 本部が決済を代行し、手数料を引いて教室に支払う
- 返金・苦情の窓口
- 契約の当事者は教室のまま。返金は教室が負担し、本部が精算で差し引く
- 決めること
- 入金から支払までの期間。返金の精算の方法。本部が破綻したときの受講料の扱い
どの型にするかで、特定商取引法の書面を交付する義務を負う事業者が決まります。特定継続的役務提供(長期・継続の役務で、中途解約のトラブルが多い取引)として規制されるのは、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの7つに限られます。音楽や料理、着付けなどの教室や、資格を取るための講座が当然に含まれるわけではありません。まず、自分の教室の内容がこの限られた役務に当たるかを当てはめます。
当たる場合は、期間と金額の要件を確かめます。語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室は、期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるものが対象です。たとえば、月謝12,000円で6か月の契約なら72,000円で、金額の要件を超えます。このとき、事業者は契約前に概要書面を、契約後は遅滞なく契約書面を交付しなければならず(同法42条)、書面を受け取った日から数えて8日以内であればクーリング・オフができ(同法48条)、その後も将来に向けて中途解約ができます(同法49条)。中途解約のときに請求できる損害額には役務ごとに上限があり、役務の提供開始前の解約では、学習塾は1万1千円、語学教室とパソコン教室は1万5千円、家庭教師は2万円が上限です。「入会金は理由を問わず返さない」という加盟教室の規約は、この上限と衝突することがあります。
書面を交付する義務を負うのは、受講契約の当事者である教室運営者です。本部が渡すひな形が法定の記載事項を満たすか、本部の側で確かめておきます。特定商取引法の対象にならない教室でも、生徒が消費者であれば、消費者契約法の規律は及びます。解約したときの違約金は、同法9条1項1号により、解除に伴う平均的な損害の額を超える部分が無効になります。「故意又は重大な過失による場合を除き責任を負わない」と書いて免責する型は、軽過失の全部免除となり、同法8条1項の規律により無効になることがあります。生徒向けの規約の書き方は、養成講座の受講契約書:返金・中途解約の段階設計で扱っています。
閉校のときの前払い分も、加盟契約で決めておく論点です。半年分・年間分の受講料を前払いで受け取っている教室が、加盟契約の終了と同時に閉校すれば、生徒には未提供の受講料が残ります。生徒への返金は、受講契約の当事者である教室が負うのが原則です。本部が受け皿として生徒を引き継ぐ設計もありますが、受講契約の相手方を替える(契約上の地位を移す)には、生徒の承諾が必要です。引継ぎを加盟契約に書いても、生徒本人が承諾しなければ、本部は受講料を受け取る立場にはなりません。終了の通知を、終了日の何日前までに、誰が、生徒に対して行うかも、条に書きます。
生徒の個人情報の扱いも、加盟契約の終了で表に出ます。教室が取得した生徒の氏名・連絡先・出欠・成績の記録を、本部と共有して使うなら、委託(個人情報保護法27条5項1号)なのか、共同利用(同項3号)なのか、第三者への提供(同条1項、本人の同意が原則)なのかを選びます。共同利用にするには、共同して利用する旨、データの項目、利用する者の範囲、利用目的、管理に責任を持つ者の氏名または名称を、あらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置く必要があります。申込書など契約書面で個人情報を取得するときは、利用目的をあらかじめ明示します(同法21条2項)。終了時に、教室が持つデータを本部へ移すのか、削除するのかは、この整理で決まります。
認定は誰に付くのか:教室・講師、技術と体系、近隣と競業
「認定教室」という名前は、何を認定したのかを曖昧にします。場所か、教える人か、運営法人かで、その後の書き方が変わります。認定が講師個人に付く制度では、講師が退職すれば教室は認定のない場所になります。教室が認定を受ける制度では、教える人の質を何で保つかを別に決める必要があります。実務では、教室の表示は「認定講師在籍」までに抑え、在籍する講師の氏名と称号を同じ場所に示す、という整理が見られます。名称やロゴの使い方はブランドガイドラインのページが、認定の停止・取消しの手続は認定の停止・取消しのページが詳しく扱っています。
終了後の競業を書くときは、個人の技能と、本部が築いた教育の体系を分けて書くのが有効です。技能系の教室の規約には、次のような区別が見られます。受講した人が身につけた一般的な技能・知識・経験は本人のものとし、本部が構築した指導の方法・教材の構成・評価の基準・マニュアルなどの体系化された情報は本部に帰属するとして、後者を許可なく指導や営業に使うことを止める書き方です。教え方の考え方そのもの(アイデア)は、著作権では守りにくく、守れるのは教材の文章や図、デザイン、商標、そして契約で定めた使用の制限です。教材の著作権と生成AIの扱いは養成講座の教材の著作権と生成AIの規約に譲ります。
公正取引委員会の考え方は、契約の終了後の競業禁止について、本部の商権の維持やノウハウの保護に必要な範囲を超える地域、期間、内容の競業禁止義務を課すことは、優越的地位の濫用に当たり得るとしています。「終了後3年間、全国で、類似する教育事業を一切行わない」という書き方は、この範囲を超えやすい型です。範囲を絞るなら、次の組み合わせが考えられます。
- 内容:本部の教材・カリキュラム・マニュアルを使った指導に限る。一般的な技能の指導は妨げないと明記する。
- 期間:生徒や商圏への影響が薄れるまでの、合理的な短さにとどめる。
- 地域:旧教室の所在地を中心とした通学圏など、特定する。オンラインを含めるかは別に決める。
- 表示:「元○○教室」「○○出身」のように、終了後も提携関係が続いているように見える表示は制限する。事実としての経歴を書く方法は、本部が認めた範囲で決める。
商圏の保護(近隣に同じ本部の教室を出さない約束)も、教室では争いが多い論点です。実務では、「教室の所在地から半径○km以内に新たに教室を設けるよう努める」と、努力義務にとどめる例があります。そのうえで、売上が基準を下回る状態が続けば保護しない、という例外を置く型もあります。この例外は、立ち上がりに時間のかかる教室ほど不利に働きます。また、距離の基準点や距離が、二つの条で食い違っている例もあります。本部の所在地から一定の距離、既存の教室から別の距離と書いてあり、どちらを優先するかが書かれていない場合です。基準点(本部か、既存の教室か、新教室か)と測り方(直線距離か、道のりか)は、一つに統一します。通学圏が重なるオンラインの生徒を、商圏保護の対象に含めるかも、決めておきます。
SNSのアカウントや生徒への連絡網(LINEグループなど)の名義も、終了時に争われます。本部が作って教室に貸す形なら本部が回収でき、教室が自分で作ったものなら名称を外して残せます。どちらにするかを開校前に決めて書きます。
よくある失敗と直し方
加盟契約のひな形や、他の業種の加盟契約書を土台にした教室の契約書には、次のような型が多く見られます。
書き方の例(一般的な例) 教室の加盟契約書の例
加盟金
加盟金は、加盟の権利、名称の使用権、研修の受講権の対価であり、理由のいかんを問わず返還しない。
加盟金の対価を列挙し、研修の開始前の解約と、本部の事由で研修を実施できなかったときの返還を段階で定める。
ねらい提供前の対価まで不返還にしないことで、行き過ぎた条項として争われることを避ける。
ロイヤリティ
ロイヤリティの割合は別途甲が定める。甲は、事前に通知して割合や計算方法を変更できる。
割合と基礎を本文で決める。変更は、更新の機会に、加盟した教室が同意した場合に限る。
ねらい加盟後に条件が変わる不安を取り除き、募集時の説明と契約の中身を一致させる。
解除
契約違反があったときは、催告なしに直ちに解除できる。研修の未受講が累積すれば解除できる。
金銭の不払いなどは相当の期間を定めた催告を経て解除する。違反は重大なものに限り、研修は振替を認める。
ねらい軽い違反で、開校のために投じた費用が一度に無駄になることを防ぐ。
競業
終了後3年間、全国で、類似の教育事業に関与しない。
本部の教材・カリキュラムを使った指導に限り、期間と地域を絞る。一般的な技能の指導は妨げない。
ねらいノウハウの保護に必要な範囲に収め、争われても耐えられる条項にする。
生徒と閉校
終了後の生徒の扱いの定めがない。または、生徒の名簿と受講契約を本部に引き渡す。
生徒への通知、前払い分の精算、引継ぎは生徒の承諾を得て行うこと、個人データの扱い(共同利用か委託か)を決める。
ねらい閉校で最も傷つくのは生徒。受講料の返金と個人情報の移動を、加盟契約の中で整理する。
ヒヤリングで確認すること
書類を作る前に、制度の実態を確かめる問いを並べます。次の問いが埋まらないまま条文を書くと、募集の説明と契約書の内容が食い違います。
確認しておきたい問いと理由 教室の加盟制度を作る前に
加盟させるのは、教室ですか、講師個人ですか。認定は教室と講師のどちらに付きますか。
認定の帰属が決まらないと、表示、講師が替わったときの扱い、取消しの条が書けません。
加盟金とロイヤリティは、それぞれ何の対価ですか。研修や教材のうち、有償のものと無償のものは何ですか。
対価が曖昧なままだと、返還の可否と、ロイヤリティの基礎が決まらず、募集時の説明も揺れます。
ロイヤリティは、在籍数、受講料売上、入金額のどれを基礎にしますか。返金、休会、体験の生徒をどう扱いますか。
返金分を差し引くかで金額が変わります。数え方を決めないと、毎月の請求で争いになります。
生徒と受講契約を結ぶのは、教室ですか、本部ですか。受講料の入金先と返金の窓口はどこですか。
特定商取引法や消費者契約法の義務を負う事業者と、苦情の窓口が決まります。
教室が扱う役務は、特定継続的役務の7つの役務に当たりますか。期間と金額は、2か月・5万円を超えますか。
当たるなら、概要書面・契約書面・クーリング・オフ・中途解約の上限の条を、受講契約に入れる必要があります。
本部は、加盟した教室に物品(教材、機器、用品)を継続して販売しますか。教室は生徒にそれを売りますか。
小売の要素が大きいと、中小小売商業振興法の書面交付の対象かの確認が必要になります。
教室が閉校するとき、前払い受講料の返金と生徒の引継ぎを、誰がどう行いますか。
実際に起きやすい場面です。生徒の承諾の取り方と、個人データの移し方まで決めておきます。
終了後に、加盟した教室が続けてよいこと、続けてはならないことは何ですか。個人の技能と本部の体系をどう分けますか。
競業の範囲を、守りたい資産に合わせて絞るための問いです。
回答の例は事業ごとに異なります。決まっていないことは、決まっていないと書類に残し、決まった時点で見直せる形にしておきます。
条文例:加盟金・ロイヤリティと、終了時の生徒の取扱い
説明のために書き起こした条文例です。[ ]は事業ごとに埋めます。
- 乙は、甲に対し、加盟金[ ]円(税込)を、[ ]までに支払います。加盟金は、①甲の名称及びロゴの使用許諾、②初期研修、③教材及びマニュアルの初期の提供、④開校準備に関する助言の対価です。
- 甲は、加盟金を返還しません。ただし、次の各号の場合は、当該各号に定める額を返還します。①初期研修の開始前に乙が書面で解約した場合は、加盟金から、甲が開校準備のために現に支出し、その内訳を乙に示した実費を差し引いた額 ②甲の責めに帰すべき事由により初期研修の全部又は一部を実施できなかった場合は、実施できなかった部分に相当する額
- 乙は、甲に対し、毎月、前月に乙が生徒から現に受領した受講料の額から、前月に生徒へ返金した額を差し引いた額(税込)の[10]%をロイヤリティとして支払います。入会金及び教材費は、この額に含めません。
- 乙は、毎月[5]日までに、前月の在籍生徒数、受領した受講料の額及び返金した額を、甲所定の様式により甲に報告します。甲は[10]日までに請求書を送付し、乙は当月末日までに支払います。
- 前項の報告に虚偽又は過少の申告があったときは、乙は、不足額を支払うほか、その確認に要した合理的な費用を負担します。
- ロイヤリティの割合及び算定の基礎は、本契約の更新の際に、甲が更新日の[3]か月前までに書面で提案し、乙が書面で同意した場合に限り、更新後に適用します。
第2項は返還の段階を入れた形、第3項は返金分を差し引く形です。受講料を本部が一括して収納する型では、第3項と精算の条を組み合わせます。
- 本契約が終了するときは、乙は、終了日の[60]日前までに、生徒に対し、終了日、終了後の受講の取扱い及び前払いの受講料の精算の方法を、書面又は電子メールで通知します。
- 乙は、生徒が前払いした受講料のうち、終了日以後に提供すべき部分を、生徒に返金します。ただし、生徒が甲又は甲の指定する教室での受講の継続を希望し、受講契約上の地位の移転を承諾した場合は、当該部分に相当する額を、承継先に引き継ぎます。
- 乙が取得した生徒の個人データのうち、あらかじめ生徒に共同利用として通知した項目(氏名、連絡先、受講の状況)は、終了後、甲が前項の引継ぎ及び連絡のために利用します。その他の個人データは、乙が終了後[30]日以内に削除又は返還し、その旨を甲に報告します。
- 乙は、終了後、甲の名称、ロゴ及び甲の教材を使用してはならず、甲との提携が続いているかのような表示をしてはなりません。ただし、乙が甲の認定講師であった事実を、甲が認める方法で経歴として記載することを妨げません。
第3項の共同利用は、通知する項目、利用する者の範囲、利用目的、管理に責任を持つ者の氏名又は名称を、あらかじめ生徒に通知する運用とセットで置きます。
よくあるご質問
「認定教室」の制度でも、中小小売商業振興法の書面を交付する必要がありますか。
同法11条は、特定連鎖化事業を行う本部に、契約前の書面交付と説明を義務づけています。ただ、同法の連鎖化事業は、主として中小小売商業者に商品を販売し、経営の指導を行う事業を想定しており、教室のように役務が中心の事業に当然にかかるとはいえません。本部が教材や用品を教室に継続して販売し、教室が生徒に売る収益が大きい場合は、確認が必要です。義務の有無にかかわらず、金銭の内訳やロイヤリティの算定、中途解約の負担などを、契約前に書面で説明して記録に残しておくことをおすすめします。
加盟金を「理由を問わず返還しない」と書いても大丈夫ですか。
事業者間の契約なので、返還しない定め自体が直ちに無効になるわけではありません。ただし、研修の開始前の解約や、本部が研修を実施できなかった場合まで不返還と読める書き方は、公序良俗(民法90条)の観点から争われる余地があります。加盟金の対価を列挙し、研修の開始前、開始後から開校まで、開校後に分けて返還の条件を定めておくと、募集時の説明とも整合します。
ロイヤリティの計算の基礎は、売上にしますか、入金額にしますか。
どちらも使われます。入金額を基礎にすると、返金された月謝に対してロイヤリティがかからず、未回収の分にもかかりません。売上を基礎にするなら、返金額を差し引くか、入会金や教材費を含めるか、税込か税抜かを条文で決めます。月謝が1人10,000円、在籍20人、返金が1人分の月は、10%の売上基準で20,000円、入金額基準で19,000円と、差が出ます。
教室が閉校するとき、生徒の前払い受講料は誰が返金しますか。
受講契約の当事者である教室が負うのが原則です。本部が生徒を引き継ぐ設計にする場合も、受講契約の相手方を替えるには生徒の承諾が必要なので、加盟契約に書いただけで本部が受講料を受け取れるわけではありません。終了の通知の時期と方法、前払い分の精算、個人データの扱いを、加盟契約の終了の条にまとめておきます。
加盟する教室の代表者に、連帯保証をしてもらってよいですか。
求めること自体は可能ですが、個人が契約期間中の不特定の債務を保証する個人根保証は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。保証する債務の範囲と極度額を契約書に明記します。
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本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)