このページの要点
- 視聴期間は起算点を一つに決め、販売ページ・申込画面・規約・受験の案内で同じ数え方にそろえる。
- 視聴を修了の要件にするなら、視聴の確認方法と記録の利用目的を書き、記録の誤りを訂正する手続を置く。
- アカウントの共有・代理受講の禁止は、動画の流出対策に加えて、修了証の信用を守るために書く。
- 動画の不具合・停止・改訂は、免責ではなく、期間の延長・代替の提供・提供終了時の精算で受け止める。
結論:通信講座の受講契約は、「動画を見られること」と「修了や受験に進めること」を別の約束として書く
通信講座、あるいはオンデマンド講座(申込者が好きな時間に録画の動画を視聴する形の講座)の受講契約で、最初に決めたいのは視聴期間の長さではありません。「見られる期間が終わったら、修了も受験も終わりなのか」「動画が止まった間、期間は止まるのか」という、動画の視聴と、その先にある修了・認定試験との関係です。資格スクールや養成講座では、動画は学ぶための手段であると同時に、修了の判定や受験資格の材料にもなるため、一般の動画販売よりも、この二つの結びつきを書類に書いておく必要が大きくなります。
このページの結論は四つです。第一に、視聴期間は起算点(数え始めの日)を一つに決め、販売ページ・申込画面・規約・修了や受験の案内で同じ日付の数え方にそろえること。第二に、視聴を修了の要件にするなら、「どの動画を、どの方法で記録し、いつまでに」を書き、記録の取り方を個人情報の利用目的として示すこと。第三に、アカウントの共有や代理受講の禁止は、動画の流出を防ぐだけでなく、修了証や認定証の信用を守るために書くこと。第四に、動画の不具合・配信の停止・内容の改訂は、免責の一言で片づけず、期間の延長や代替の提供という「受け皿」を条文にしておくことです。
返金や中途解約の精算そのものは養成講座の受講契約書:返金・中途解約の段階設計で、修了と認定試験の組み立ては資格スクールの規約で決める修了と認定試験で扱っています。ここでは、その二つの手前にある「通信講座という提供のしかたに固有の約束」に絞ります。
通信講座の提供のしかたと、最初に決めること
完全オンデマンド型
- 提供
- 申込み後、公開済みの動画をいつでも視聴する
- 決めること
- 視聴期間の起算点、修了の判定に視聴を使うか、質問の受付期間
ライブ+録画(アーカイブ)型
- 提供
- ライブ講義に出席し、録画は復習や欠席の補いに使う
- 決めること
- 録画視聴がライブ出席の代わりになるか、録画の公開期間
段階配信型
- 提供
- 週ごと・単元ごとに動画を順次公開する
- 決めること
- 全動画が公開される日、視聴期間との関係、未公開分の扱い
同じ講座でも、コースによって型が違うことがあります。型ごとに視聴期間と修了の要件を分けて書きます。
視聴期間は、いつから数え、何に使えるのかを決める
視聴期間の定めで争いになるのは、期間の長さよりも数え始めの日(起算点)です。実務で見かける書き方には、「会員登録完了日から6か月」「受講開始日から3か月」「動画教材の視聴可能期間は別途定める」といったものがあります。このうち、登録完了日は申込者が自分で決められる日ではなく、決済の確認や承認の前に登録だけ先に済む運用では、視聴がまだできない日から期間が減っていくことがあります。「別途定める」とだけ書いて、その別の定めがどこにも書かれていないものも少なくありません。
| 起算点 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 決済の確認日 | 日付が記録に残り、争いになりにくい | 決済の確認から視聴開始までに日数が空く運用では、その間も期間が進む |
| ログイン情報などの発行日 | 実際に見られる状態になった日から数えられる | 発行日を申込者に通知しないと、いつ数え始めたかが分からなくなる |
| 最初に動画へアクセスした日 | 申込者の都合に合わせられる | アクセスしない人の期間が終わらない。「発行から○日以内に最初のアクセスがなければ、その日から数える」という上限が要る |
| 開講日(全員共通) | 期間の満了日をそろえやすい | 開講日より後に申し込んだ人の実質の期間が短くなる |
どれを選んでも、販売ページ、申込画面、規約、修了・受験の案内で、同じ数え方を書くことが前提です。
通信販売として講座を売る場合、広告には役務の提供時期や、申込みの撤回・解除に関する事項を表示することになっており(特定商取引法11条)、インターネットの申込みの最終確認画面にも提供時期などの表示が求められます(同法12条の6)。販売ページに「いつでも視聴できます」と書き、規約に「登録から6か月で提供義務を負わない」と書くと、表示と契約が食い違います。視聴期間は、表示と規約で同じ言葉にします。
資格スクールで特に注意したいのは、視聴期間と、修了・受験の期限が別々に走ることです。たとえば、受講開始から180日間が視聴期間で、修了の通知から60日以内に最初の認定試験を受けるという規約の場合を考えます。視聴の最終日の直前に最後の課題を終えて修了が通知されると、試験の準備のために見返したい動画が、試験の前に見られなくなります。反対に、視聴期間の満了後は修了の判定をしないと書いてあれば、期間内に終えられなかった人は、再受講の費用を負担することになります。どちらが誤りということではなく、どちらの設計にするかを決め、書いておくことが要点です。
段階配信型の講座では、さらに一つ注意が加わります。毎週6本ずつ動画を公開し、30本が全部そろうのが開始から4週後(開始時に6本、以後毎週6本ずつ増えて、4週目に30本)だとします。視聴期間が60日であれば、最後の動画を見られる期間は、公開日から数えて約32日です(60日から28日を引いた日数)。ところが、期間を「開始日から数える」と書いてあると、初めの動画は60日間見られるのに、最後の動画は32日しか見られない、という差が生じます。修了の要件に全動画の視聴が入っているなら、この差は修了の機会の差になります。段階配信にするときは、「各動画の公開日から○日間」とするか、「全動画の公開が終わった日から○日間」とするかを決めます。
- 受講者は、当社が受講開始日として通知した日から[180]日間、本講座の動画を視聴することができます。受講開始日は、受講料の入金を当社が確認し、ログイン情報を発行した日とします。
- 動画を順次公開する講座では、前項の期間は、最後の動画を公開した日から数えます。ただし、各動画の公開日から[30]日を経過するまでは、その動画を視聴することができます。
- 第1項の期間の満了日までに、修了の要件を満たす見込みがあるにもかかわらず、疾病、災害その他やむを得ない事由により視聴を終えられなかった受講者は、満了日の前日までに申し出ることにより、[30]日を上限に視聴期間の延長を求めることができます。延長の可否は、事由を確認して当社が判断し、結果を電子メールで通知します。
- 当社は、認定試験を受験する受講者に対し、前三項の期間が満了した後も、試験範囲の動画を、受験日までの間に限り視聴できる状態に置きます。
[ ]は講座ごとに埋める箇所です。第4項を置くかどうかは、試験を自社で実施するかによります。
視聴期間が終わったあとの扱いも決めておきます。視聴用のサイトから動画を見られなくなっても、配布したPDFのテキストやワークシートは手元に残ります。期間の終了後はこれらも使わないよう求めるのか、自分の学習のために保有することは認めるのか、どちらかを書いておかないと、「期間が終わったのだから資料も消す」と考える事業者と、「手元の資料は自分のもの」と考える受講者の認識が食い違います。実務では、サイト上の閲覧権限は期間の終了で止め、ダウンロード形式で渡した資料は、自分の学習の範囲で持ち続けることを認め、第三者への提供や講座での使用は認めない、という整理が見られます。
視聴を修了や受験の要件にするとき:配信の型・記録の取り方・個人情報
資格スクールの通信講座では、「指定された動画を全て視聴すること」が修了の要件に入っていることが多くあります。この要件には、決めておくべき点が三つあります。一つ目は、何をもって「視聴した」とするか。動画を最後まで再生したことか、一定の割合以上の再生か、確認テストへの合格までを含むのか。二つ目は、早送りや、再生したまま別の作業をしていたことをどう扱うか。三つ目は、視聴の記録に誤りがあった場合に、受講者が申し出る方法です。「全ての動画コンテンツの視聴を完了し、かつ、提出期限までに提出した課題の全てについて添削を受けたこと」のように、修了を「視聴の完了」と「課題の添削」に分解して定義しておく書き方があります。
ライブ講義と録画を併用する講座では、録画の視聴がライブへの出席の代わりになるのかを決めます。録画で見たことを理由に出席扱いを求める申出は、オンライン講座でよくあります。出席率を修了の要件にしている場合は、「録画の視聴は、事業者が個別に認めた場合を除き、出席の代わりにならない」と書き、認める場合の条件(理由、期限、追加の課題)を別に定めておきます。修了の判定の仕組みは修了と認定試験のページに譲ります。
視聴の記録を修了の判定に使うなら、その記録は個人情報の取扱いの問題にもなります。視聴の履歴、ログイン日時、学習の進捗は、氏名やメールアドレスと結びついて管理されるのが通常で、個人情報保護法では、取り扱う目的をできる限り特定する必要があり(17条1項)、取得したときは利用目的を本人に通知又は公表し、契約書などの書面で本人から直接取得する場合はあらかじめ明示することになっています(21条1項・2項)。プライバシーポリシーに「サービスの提供のため」とだけ書いて、視聴の記録を修了の判定や認定試験の受験資格の確認に使うことが読み取れないのは、よくある不足です。「受講履歴及び学習進捗を、修了の判定及び受講の支援のために利用する」のように、判定に使うことを書いておきます。
動画の配信を外部のサービスに任せている場合は、委託先の監督(25条)と安全管理(23条)の対象になります。配信のサーバーが海外にあり、視聴の記録も一緒に預けるときは、外国にある第三者への提供(28条)に当たるかどうかを検討します。さらに、受講契約が終わったあとに視聴の記録をいつまで残すかも決めます。受講の終了から一定期間(たとえば30日)で消去すると定める規約もありますが、修了証や認定の再発行、問合せへの対応のために、修了者の記録は別に保存する必要が出ることがあります。この場合は、消去の対象から修了や認定に関する記録を外し、保存の目的と期間を示します。
- 当社は、受講者の視聴の履歴、ログイン日時、確認テストの結果及び課題の提出状況(以下「学習記録」といいます。)を、修了の判定、受講の支援、認定試験の受験資格の確認及び受講者からの問合せへの対応のために利用します。
- 受講者は、学習記録に誤りがあると考えるときは、当社が定める方法により、訂正を申し出ることができます。当社は、申出の内容を確認し、誤りがあるときは訂正して、結果を電子メールで通知します。
- 当社は、受講契約の終了から[30]日以内に、学習記録のうち修了の判定に関するもの以外を消去します。修了の判定に関する記録は、修了証及び認定証の再発行並びに問合せへの対応のために、[ ]年間保存します。
保存の期間は、修了証や認定証の有効期間、問合せの実情に合わせて決めます。
アカウントの共有・代理受講:動画の流出よりも、修了証の信用を守る
通信講座の規約には、ほとんどの場合、アカウントを第三者に貸与・譲渡・共有してはならない旨の定めがあります。「自己の会員資格、ユーザーIDまたはパスワードを第三者に譲渡、貸与、共有、売買、名義貸しすること」のような書き方です。資格スクールでこの条項が持つ意味は、動画の流出を防ぐことにとどまりません。アカウントを共有した別の人が視聴や確認テストを済ませ、受講者本人が修了証を受け取れば、その修了証や認定証は、実際に学んでいない人に与えられたことになります。認定講師として名乗る人が、実は動画を見ていなかったとなれば、制度全体の信用が揺らぎます。
書き方の工夫は、何を禁じるかをはっきり分けることです。家族が同じ端末で並べて見ることは禁止なのか、社内で一人が受講して同僚に画面を見せることはどうか、会社が複数人の受講を申し込む場合に席数をどう数えるか。これらを決めずに「共有の禁止」とだけ書くと、受講者側は何が違反なのか分かりません。一人に一つのアカウントを発行し、同時にログインできる端末の数に上限を設ける技術的な制限を併用するのが一般的ですが、制限にかかったときの案内(別の端末での再ログインの手順、問合せ先)も書いておきます。
動画の録画や保存については、法律の定めと契約の定めを分けて考えます。著作権者は、その著作物を複製する権利(21条)と、公衆送信を行う権利(23条1項)を専有します。他方、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とするときは、一定の場合を除き、使用する者が複製できる(私的使用のための複製、著作権法30条1項)とされているため、受講者が自分の復習のために録画することが、著作権法だけで直ちに侵害になるとは限りません。だからこそ、規約で「事業者が認める方法による保存を除き、録画・保存を禁止する」と上乗せして定め、SNSやグループチャットへの投稿のような公衆送信は著作権の問題になり得る行為として書いておく、という二段の構成にします。
違反したときの措置は、順序と範囲を書きます。実務では、「違反した場合は事前の通知なく受講資格を剥奪し、返金は一切しない。さらに受講料の数倍の違約金を支払う」という書き方を見かけます。このうち違約金は、契約を続けたまま違反に科すものなので、消費者契約法9条1項1号(解除に伴う違約金の規制)ではなく、民法420条・90条や消費者契約法10条の問題として検討します。軽微な共有の疑いの段階で一律に高額の違約金を課す定めは、根拠を説明しにくくなります。警告と是正の機会を設け、停止と解除は重大な違反か是正されない場合に限り、返金しない範囲は違反によって提供が不要になった部分に絞る、という順序に改めます。違約金の考え方そのものは養成講座・認定講師規約の違約金のページに譲ります。
- 受講者は、自己に発行されたアカウントを、自己のみのために使用し、第三者に貸与、譲渡、共有又は使用させてはなりません。受講者は、動画の視聴、確認テストの受験及び課題の提出を、自ら行わなければなりません。
- 同時にログインできる端末は[2]台までとします。上限に達した場合は、使用していない端末からログアウトすることにより、別の端末でログインできます。
- 当社は、前二項に違反するおそれがあると認めるときは、受講者に事情の説明を求め、是正を求めることができます。受講者が是正に応じないとき、又は違反が重大であると認めるときに限り、当社は、アカウントを停止し、又は受講契約を解除することができます。
- 前項により受講契約を解除した場合でも、当社は、違反の時から後の受講期間に対応する部分の受講料を、返金に関する条の定めに従って精算します。違反によって取得された修了証は、当社が無効とすることができます。
第4項の精算の方法は、返金規定の条に合わせて書きます。
動画の不具合・配信の停止・内容の改訂:免責の一言で終わらせない
通信講座では、動画が再生できない、音声が出ない、サイトに入れない、といった問合せが日常的に起こります。原因は、受講者の端末や通信の環境にある場合、事業者側の配信の設定にある場合、動画を預けた外部のサービスの障害にある場合の三つに分かれます。規約によく見られるのは、これらをまとめて、「通信環境や機材の不備、外部サービスの停止・不具合により受講が困難になった場合でも、当社は一切の責任を負わない」と書くものです。受講者側の環境が原因のものは、この書き方でも大筋は通ります。しかし、事業者の配信の設定や、事業者が選んだ外部サービスの不具合まで、一律に免責にすることはできません。
消費者に対する契約では、事業者の債務不履行によって消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。「当社の責めに帰すべき事由があっても責任を負わない」と読める書き方になっていると、その部分が無効になるおそれがあります。「当社の判断で、事前の通知なく変更、中止又は終了でき、これに起因する損害に一切の責任を負わない」といった書き方も、同じ点で問題になります。責任の上限を設けるときは、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、上限を定めるというのが、同法8条3項の求める書き方です。その除外は、上限を定めるその一文の中に書きます。
動画が見られないときの切り分けと対応(例)
- 申出受講者が、症状(再生できない・音声が出ない等)、端末・回線、時刻を問合せ窓口に伝える
- 切り分け他の動画・他の端末で再現するかを確認し、受講者側か配信側かを判断する
- 配信側の原因復旧し、停止していた日数を記録する
- 期間の調整停止した日数に応じて視聴期間を延長する。長期に及ぶ場合は代替の提供や精算を検討する
- 記録対応の結果を受講者に電子メールで伝え、学習記録に影響が出ていれば訂正する
停止日数の記録がないと、延長の根拠を示せません。配信側の停止の記録は、事業者が残しておきます。
配信側の原因による停止が続いた場合に、民法の考え方も参考になります。当事者双方の責めに帰することができない事由で債務を履行できなくなったときは、債権者(受講者)は反対給付である受講料の支払を拒むことができます(民法536条1項)。事業者に責めがあるときは、債務不履行による損害賠償(415条)や、催告による解除(541条)、一定の場合の催告によらない解除(542条)の問題になります。規約に書いておくのは、このような法律上の帰結を、事業者に有利に変えることではなく、実際の運用に合わせた具体的な手順です。たとえば、「配信側の原因により動画を視聴できなかった日数(連続して○時間以上の停止を1日と数える)の合計だけ、視聴期間を延長する」のように、数え方を決めます。
例を示します。視聴期間が180日の講座で、開始から100日目に配信の障害が起こり、動画が2日間見られなかったとします。さらに140日目に外部の配信サービスのメンテナンスがあり、1日見られなかったとします。合計3日の停止ですから、満了日は当初の予定から3日後ろにずれます。
内容の改訂も、通信講座に固有の論点です。法改正や試験範囲の変更があると、録画の動画は内容が古くなります。「当社は、動画の追加、差替え又は削除をすることがあります」と書くことは通常ですが、修了や認定試験に必要な動画を差し替えるときは、受講者に通知し、すでに視聴を終えた動画をどう扱うか(見直しを求めるのか、視聴済みのままにするのか)を書いておかないと、修了の要件の充足が争いになります。講義を担当した講師が退任した場合に、その講師の動画を引き続き使えるかは、受講者向けの規約ではなく、講師との契約書で決めるものです。受講者向けの規約に「動画は期間中提供する」と書いても、講師が許諾していたのが一定期間の配信だけであれば、その外にある動画は提供できません。講師との契約の書き方は講師業務委託契約書(外部講師)のページで説明しています。
- 当社の責めに帰すべき事由により、動画を視聴できない状態が連続して[24]時間以上続いたときは、その日数の合計だけ、第○条の視聴期間を延長します。延長した日数は、当社が電子メールで受講者に通知します。
- 受講者の通信環境、端末その他の事情により動画を視聴できないときは、当社は、原因の確認に協力しますが、視聴期間の延長はしません。
- 当社が本講座の提供を終了するときは、終了日の[60]日前までに受講者に通知します。終了により視聴できなくなる期間があるときは、当社は、その期間に対応する受講料を返金し、又は同等の内容の講座の提供により精算します。
- 当社の債務不履行により受講者に損害が生じた場合、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、当社が賠償する額は、受講者が当社に支払った受講料の額を上限とします。
第4項は、上限を定める一文の中に「故意又は重大な過失による場合を除き」を入れる形にしています。
よくある失敗と直し方:通信講座の規約でよく見られる書き方
通信講座の受講契約や規約をレビューするとき、繰り返し見られる書き方があります。ここでは、典型的なものを、直し方とあわせて整理します。
書き方の例(一般的な例) 視聴期間・提供の終了・共有の禁止・返金
視聴期間
「動画教材は、会員登録完了日から6か月を経過した後は、提供を続ける義務を負わない。」
「動画の視聴期間は、入金の確認後にログイン情報を発行した日から6か月間とする。発行した日は電子メールで通知し、販売ページに表示した期間と同じとする。」
ねらい起算点を実際に見られる日に結びつけ、表示と契約を一致させる。登録だけ先に済む運用でも、期間が目減りしない。
提供の変更・終了
「技術的制約、法令変更、経済的事情その他の理由により、事前の通知なく、サービスの全部又は一部を変更、中止又は終了でき、これに起因する損害に一切の責任を負わない。」
「サービスを終了するときは、終了日の60日前までに通知する。終了により視聴できなくなる期間に対応する受講料は、返金又は同等の内容の提供により精算する。当社の債務不履行による賠償は、当社等の故意又は重大な過失による場合を除き、受講料の額を上限とする。」
ねらい債務不履行の責任を全部免除する書き方をやめ、予告と精算の受け皿を置く。
共有の違反
「アカウントの共有等の違反があったときは、事前の通知なく受講資格を剥奪し、返金は一切しない。違約金として受講料の3倍を請求する。」
「違反のおそれがあるときは、事情の説明と是正を求める。是正されないとき、又は違反が重大であるときに限り、アカウントを停止し、又は解除する。違約金は、違反による損害の算定の根拠を示せる範囲で定める。」
ねらい警告→停止→解除の順序にし、返金しない範囲と違約金を、違反との関係で説明できる形に絞る。
コンテンツ商品の返金
「動画は、視聴用リンクを送信した時点で提供が完了したものとし、法令に基づく場合を除き、返品・キャンセル・返金を行わない。」
「動画を段階的に公開する講座では、すでに公開した動画に対応する部分は返金せず、未公開の部分は、公開されていない期間に応じて返金する。全動画を購入直後から視聴できる場合は、その旨を販売ページに示したうえで、返金の条件を書く。」
ねらい「リンクを送った時点で提供完了」とみなす書き方は、段階的に公開する設計と矛盾する。提供の実態に合わせた区分にする。
提供終了後の記録の消去
「サービスの終了後、30日以内に受講データ、登録情報、学習履歴を消去する。」
「サービスの終了後、30日以内に学習記録を消去する。ただし、修了証及び認定証の再発行のため、修了の判定に関する記録は[ ]年間保存する。」
ねらい修了者の記録まで一律に消すと、後日の再発行や問合せに応じられない。保存の目的と期間を示して除外する。
修了者が認定講師になったあとは、通信講座の動画を自分の生徒に見せてよいのかという別の問題が生じます。動画の視聴アカウントを生徒に渡さない、アクセス情報を共有しない、指導中に再生する以外の使い方は書面の許諾が要る、といった線引きを認定講師規約の側で書くのが実務です(認定後の更新や有効期間は認定講師規約の有効期間・更新・年会費を参照)。動画や教材を生成AIに入力する行為の禁止は教材の著作権と生成AIの規約で扱っています。
ヒヤリングで確認すること:通信講座の受講契約を作る前に
通信講座の規約は、動画の配信の仕組みと、修了・認定の運用に左右されます。書類を作る前に、次の事項を確認しておくと、条文が実際の運用とずれずに済みます。
確認しておきたい問いと理由 通信講座・オンデマンド講座の受講契約
動画は、申込み直後に全部見られますか。週ごとなどの順次公開ですか。ライブ講義の録画を使う部分はありますか。
返金の区分、視聴期間の起算点、録画視聴が出席の代わりになるかを決める基礎になるためです。
視聴期間は何日(何か月)で、いつから数えますか。販売ページ・申込画面にはどう書いていますか。
表示と規約を一致させ、期間の数え方に争いの余地を残さないためです。
修了の要件に、動画の視聴は入っていますか。視聴の確認は、再生の記録ですか、確認テストですか。
視聴の記録を修了の判定に使うなら、利用目的の記載と、記録に誤りがあったときの訂正の手続が要るためです。
修了後、認定試験を受けられる期限は、視聴期間とどう関係しますか。試験の前に見返す動画はありますか。
視聴の満了と受験の期限がずれていないか、復習の窓を設けるかを決めるためです。
アカウントは本人専用ですか。家族や職場での利用を認めますか。会社が複数名分を申し込む場合の席数の数え方は。
共有の禁止の範囲を決め、販売ページとの食い違いをなくすためです。
動画の配信は、自社のサイトですか、外部のサービスですか。そのサービスのサーバーは国内ですか。
停止時の延長・代替の設計と、委託先の監督や外国にある第三者への提供の検討が必要になるためです。
動画に出演する講師は、自社の社員ですか、外部講師ですか。講師との契約には、動画の配信期間の許諾が書かれていますか。
受講者向けの規約で約束する視聴期間が、講師から許諾された範囲を超えないようにするためです。
申込みの前に、ビデオ通話などの個別の相談を挟んでいますか。
通信販売として扱えるか、別の取引類型の規律がかかるかが変わり、返金や書面の設計に影響するためです。
よくあるご質問
通信講座の視聴期間は、いつから数えるのがよいですか。
登録の日ではなく、入金を確認してログイン情報を発行した日のように、実際に視聴できる状態になった日から数える書き方が整理しやすくなります。発行の日付は受講者に電子メールなどで通知し、販売ページ、申込画面、規約で同じ数え方を書きます。通信販売では、役務の提供時期や撤回・解除に関する事項の表示が必要なので(特定商取引法11条)、表示と規約を一致させます。
視聴期間が終わったあとに、認定試験を受けられるようにする必要がありますか。
法律上、一律に決まっているものではありません。ただ、視聴期間の満了と修了後の受験期限がずれると、試験の前に動画を見返せない問題が起こります。受験日までの間は試験範囲の動画を視聴できるようにする、延長の事由と手続を決めておく、といった設計を、規約に書いておくことが実務的です。
家族とアカウントを共有されるのを防ぐには、どう書けばよいですか。
アカウントの貸与・譲渡・共有を禁じ、視聴、確認テスト、課題の提出を本人が行うことを書きます。家族が横で見ることを認めるかを先に決め、同時ログインの端末数に上限を設けて案内を添えます。違反の措置は、説明の要請、是正の要請、停止、解除の順に書き、返金しない範囲は違反との関係で説明できる範囲に絞ります。受講料の数倍の違約金を一律に定める書き方は、根拠を説明しにくくなります。
動画が再生できなかった場合、「責任を負わない」と書いてよいですか。
受講者の端末や通信環境が原因の場合は、延長しない扱いを書けます。事業者の配信側の原因の場合まで責任を全部免除する書き方は、消費者契約法8条1項1号により無効となる部分を含みます。配信側の原因で見られなかった日数だけ視聴期間を延長する、長期に及ぶときは代替の提供や精算をする、といった受け皿を条文にします。賠償額に上限を設けるときは、故意又は重大な過失による場合を除く旨を同じ一文に書きます(同法8条3項)。
視聴の記録を修了の判定に使うとき、気をつけることは何ですか。
視聴の履歴や進捗は、氏名などと結びついて管理されれば個人情報として取り扱うことになります。個人情報保護法では、利用目的をできる限り特定し(17条1項)、契約書などの書面で直接取得するときは、あらかじめ明示します(21条2項)。「修了の判定に利用する」ことをプライバシーポリシーや規約に書き、記録に誤りがあるときの訂正の手続、受講終了後の保存と消去の期間も決めておきます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)