このページの要点
- 「当社は一切関与しない」だけでは足りず、関与できる範囲(確認・削除・制限)と、関与しない範囲(当事者間の賠償の仲立ち)を分けて書く。
- 勧誘の禁止は、何を、誰が、どこでまで書き、運営者自身の案内や認定講師の正当な活動との境目を示す。
- ハラスメントは、実技の練習や個別メッセージを含めて例示し、講師・スタッフにも同じ基準を適用する。
- 措置は段階にして、理由の通知と説明の機会を置き、受講料・修了・認定との関係を先に決める。
結論:受講者間のトラブルは「当事者で解決してください」と書くだけでは足りず、運営者が関われる範囲と手順を決めておく
資格スクールや養成講座を申し込むと、受講者どうしは多くの場合、何かの場でつながります。グループチャット、ライブ講義のチャット欄、実技の練習の相手、修了後の同期会などです。このページでは、そうした受講者どうしが交流する場を「コミュニティ」と呼びます。規約では、禁止事項の一行や、「受講者間のトラブルに当社は一切関与しません」という免責の一文で済まされていることが少なくありません。しかし、実際に起きるのは、グループ内での他の受講者への誹謗中傷、同期へのネットワークビジネスの勧誘、認定を得た先輩講師による受講者への営業、実技の練習中の不適切な接触、相談内容や家庭の事情の外部への漏えいといった、運営者が全く知らないでは済まない出来事です。
このページの結論は五つです。第一に、「一切関与しない」と書いても、運営者が自分でつくった場で起きた問題への対応を求められる場面は残るため、関与できる範囲(報告を受ける、事実を確認する、投稿を削除する、利用を制限する)と、関与しない範囲(当事者間の損害賠償や示談の仲立ち)を分けて書くこと。第二に、勧誘の禁止は「何を」「誰が」「どこで」まで書き、受講者を守るための禁止と、認定講師や卒業生の正当な活動との境目を示すこと。第三に、ハラスメントは言葉の定義だけでなく、実技演習や個別メッセージのような講座の外側に近い場面を含めて書くこと。第四に、グループ内の発言や相談内容は秘密保持と個人情報の両面から扱い、範囲を広げすぎないこと。第五に、措置は段階にして、理由の通知と説明の機会を置き、修了や認定、返金との関係まで先に決めておくことです。
返金や中途解約の精算そのものは養成講座の受講契約書:返金・中途解約の段階設計で、認定後の停止や取消しの手続は認定講師の資格の停止・取消しと規約の手続で扱っています。このページは、その手前にある、受講中の受講者どうしの関係に絞ります。
なぜ資格スクールや養成講座では、受講者間のトラブルが重くなるのか
資格スクールや養成講座で受講者間のトラブルが重くなるのは、受講者どうしの関係が、その後の仕事や名乗りにつながっているからです。同期は将来の同業者であり、競合でもあります。修了や認定試験の合否が運営者の判断で決まる講座では、運営者に嫌われれば認定が受けられなくなるという不安から、被害を受けた受講者が声を上げにくくなることもあります。逆に、処分を受けた受講者にとっては、受講の停止が認定を失うことに直結するため、処分の根拠と手順が曖昧だと争いが大きくなります。
もう一つの特徴は、場が一つではないことです。運営者が管理するグループだけを想定した規約では、実際に問題が起きる場の大半が規約の外に出てしまいます。場には、運営者が用意した公式のグループやライブ講義のチャット、受講者が自分たちで作った自主グループや修了後の交流会、実技の練習やロールプレイのような講座の中の演習、受講者どうしの個別のメッセージがあります。
実務では、公式の場にだけ詳しいルールを置き、受講者が作った場や個別のやり取りには一言も触れていない規約を多く見かけます。この状態で、同期の自主グループで他の受講者への中傷が起き、被害者が運営者に訴えたとします。運営者は管理者でないので投稿を消せず、規約にも対象外と書いていないため、対応するのかしないのかを、その場の判断で決めることになります。あらかじめ「受講者が自ら作った場は、運営者の管理外である。ただし、講座の受講に関係して他の受講者の権利を害する行為が申し出られた場合は、運営者は事実を確認し、受講契約に基づく措置をとることができる」と書いておけば、運営者が動ける根拠になり、動かないことを選ぶ場合にも説明がつきます。
「当社は一切関与しません」と書けば、運営者は責任を免れるのか
受講者間のトラブルについて、規約には二つの型が見られます。一つは、「受講者どうしの紛争は当事者の責任と費用で解決し、当社は一切の責任を負わない」という全面免責の型。もう一つは、受講者に運営者への報告を義務づけ、運営者が事情の確認、注意、受講の制限、面談、除名などの措置をとれるようにしたうえで、措置や対応の結果について運営者の責任を限定する型です。前者は短く書けますが、運営者の動き方が何も決まりません。後者は、運営者に権限を与える代わりに、受講者に協力を求め、手順を残すことができます。
どちらの型でも、免責の書き方には注意が要ります。個人が事業と関係なく受講する場合は、受講契約が消費者契約になるため、消費者契約法の規制を受けます。事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効とされ(消費者契約法8条1項1号)、事業者の債務の履行に際してされた不法行為による責任の全部を免除する条項も同様です(同項3号)。実務で多い「故意又は重大な過失がある場合を除き、一切の責任を負わない」という書き方は、故意や重大な過失の場合は責任を負うと留保していても、軽い過失の場合の責任を全部免除する条項になるため、この規制の対象になります。責任に上限を設けるなら、「当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、受講者が支払った受講料の額を上限とする」のように、上限を定めるその一文の中に例外を書く必要があります(同法8条3項)。
- 受講者は、他の受講者との間で、紛争、誹謗中傷、迷惑行為その他のトラブル(以下「受講者間トラブル」といいます。)が生じたとき、又は生じるおそれがあると考えるときは、当社が定める窓口に、その内容を申し出ることができます。受講者間トラブルを知った受講者は、事実を整理し、可能な範囲で記録を添えて申し出るよう努めます。
- 当社は、前項の申出があったとき、又は受講者間トラブルがあることを知ったときは、必要な範囲で、関係する受講者から事情を聴き、投稿その他の記録を確認します。当社は、その結果に応じて、次の措置のうち、必要なものを選んでとります。ア 注意又は警告 イ 投稿の削除 ウ 書込み又は閲覧の制限 エ 受講の一時停止 オ 受講契約の解除
- 当社は、前項の確認にあたり、申し出た受講者及び関係する受講者の氏名その他の個人情報を、確認と措置に必要な範囲を超えて他の受講者に知らせません。申出をしたことを理由として、当社は、受講者に不利益な取扱いをしません。
- 受講者どうしの間で生じた損害の賠償、謝罪その他の請求は、当事者間で解決するものとし、当社は、その仲立ちや代理をしません。ただし、当社が前項の措置をとる権限は、これによって制限されません。
- 当社は、本条の措置に関して受講者に生じた損害について、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、受講者が当社に支払った受講料の額を上限として責任を負います。
第4項は「紛争の仲立ちをしない」ことを明らかにし、第5項で責任の上限を、例外を含めて一つの文にしています。受講者が事業のために受講する契約だけを対象にするなら、上限の考え方は別に決められます。
受講者間トラブルへの対応の流れ(例)
- 申出・把握受講者からの申出、又は運営者自身が投稿の内容を把握する
- 事実の確認関係する受講者の言い分を聞き、投稿や記録を確認する。申出者の氏名は必要な範囲に限る
- 暫定の措置被害の拡大を防ぐため、確認の間だけ、投稿の非表示や書込みの制限をする
- 通知と説明の機会該当する規約の条、事実、求める是正を示し、説明する機会(例:到達後7〜14日程度)を与える
- 措置の決定注意、削除、制限、一時停止、解除から選び、理由と効力が生じる日を通知する
- 見直し事実の誤認が分かったとき、是正が確認できたときは、措置を解く
重大な事案(脅迫、性的な言動、犯罪行為の疑い)は、通知と説明の機会の前に、暫定の措置と運営者の判断で進めることができる旨を、別に書いておきます。
勧誘の禁止:何を、誰が、どこで、どこまで禁じるのか
受講者どうしの勧誘は、コミュニティに関する規約の中で、最も書かれていることが多く、最も雑に書かれていることも多い項目です。実務で見かけるのは、「ネットワークビジネス、宗教活動、政治活動その他の営利を目的とした勧誘行為」「本講座に関連した内容か否かに関わらず、営利、非営利を問わず、受講者を勧誘する行為」といった書き方です。受講者を守るためには役に立つ書き方ですが、広すぎる禁止は、運営者自身の運営や、認定を得た卒業生の正当な活動まで止めてしまいます。また、狭すぎると、同期の中で起きる典型を捉えられません。典型は、受講者名簿やグループで知った連絡先を使ったマルチ商法や投資の勧誘、自分が主宰する別の講座やサロンへの個別の誘い、情報商材の販売、宗教や政治の勧誘、他のスクールへの引き抜きです。
このうちマルチ商法については、特定商取引法の「連鎖販売取引」として規制されるものがあります。典型的には、商品やサービスの販売の事業に加わる人を勧誘し、加わった人がさらに次の人を勧誘する形で組織を広げていき、加わるときに入会金や商品の購入などの金銭的な負担を伴う取引です。受講者の間でこうした勧誘が行われると、被害を受けた受講者が運営者に苦情を持ち込むだけでなく、勧誘者と被害者がともに「あのスクールで知り合った」と説明することで、スクールの信用に傷がつきます。連鎖販売取引に当たるかどうかは、取引の構造(誰が、何を、どんな負担で、どう勧誘しているか)で判断されるため、規約に「連鎖販売取引」という言葉を書き込むだけでは足りず、「受講者を対象とした、商品、サービス、事業その他への勧誘」の形で広く押さえたうえで、個別の事案は事実で確認する書き方が現実的です。
もう一つの落とし穴は、運営者自身の側にあります。「受講者を紹介すると受講料を割り引く」「認定講師になれば当スクールの講座の講師になれる」「卒業後はスクールから仕事を紹介する」といった誘い文句は、受講者を勧誘し、収入の機会を示す形になり、運営者自身が受講者を勧誘する形になり、受講者に禁じている内容との整合が問われます。紹介制度を置くなら、紹介の対象と特典、特典を受けるための負担の有無、紹介を受けた側への説明の義務を、運営の側のルールとして別に書きます。収入や仕事の紹介を示す宣伝をするなら、規約には、紹介やあっせんの義務を負わないこと、収入を保証しないことを書き、広告の実際の表現とも合わせます。
- 受講者は、本講座の受講を通じて知った他の受講者の氏名、連絡先、居住地その他の情報を利用して、当該受講者に対し、次の各号の勧誘をしてはなりません。ア 商品若しくは役務の販売、又は事業への参加の勧誘(組織への加入を勧め、加入した者が更に他の者を勧誘する仕組みを含みます。) イ 投資、副業、情報商材その他本講座の内容と関係のない取引の勧誘 ウ 宗教又は政治に関する活動への勧誘 エ 受講者が他のスクール又は講座に移ることを目的とする働きかけ
- 受講者が、自己の主宰する講座、教室その他の有償の活動について、他の受講者に対し、個別のメッセージ、面談の申入れその他の方法により案内する行為は、前項に準じて禁止します。ただし、受講者から求められて回答する場合、及び当社が認めた場所と方法による案内は、この限りでありません。
- 受講者が、自己の体験、感想その他の意見を、不特定の者に向けて発信することは、前二項の勧誘に当たりません。
- 当社は、受講者が第1項又は第2項に違反したと認めるときは、段階を踏まず、事前の警告を経ずに、受講の一時停止その他の措置をとることができます。この場合でも、当社は、措置の理由を通知し、受講者から説明を受ける機会を設けます。
認定講師が受講者に案内できる場所と方法は、認定講師規約で決めます。第2項ただし書の「当社が認めた場所と方法」は、その定めを指します。
ハラスメント・誹謗中傷:講座の外に近い場面まで規約に入れる
「ハラスメント等の迷惑行為を行わないこと」という一行は、ほとんどの規約に入っています。ただ、この書き方では、どこからがハラスメントなのかが、書かれていません。処分を受ける側は「何が悪かったのか」を理解できません。そこで、典型を例示します。受講者に対して、容姿、年齢、性別、家庭の事情、経歴を理由とする中傷や冷やかし。本人が望まない個人的な連絡や、誘いの繰り返し。グループ内での特定の人の無視や排除の呼びかけ。性的な発言や、望まない接触。講座の成績や認定を引き合いに出した、不当な要求です。
資格スクールでは、これに実技の場面が加わります。身体に触れる技術、至近距離での姿勢の矯正、撮影を伴う演習、練習相手として自分の体の悩みを話す場面などがあるためです。実技の練習では、受講者の間で、触れてよい範囲、中止の合図、撮影の可否、相手の体の状態の守秘をあらかじめ決めておかないと、「練習のつもりだった」「同意していない」という食い違いが生じます。規約では、実技の練習への参加は、受講者の意思に基づく同意が前提であること、いつでも中止を求められること、中止を求めた受講者が不利益を受けないこと、相談内容や身体の状態に関する情報は練習相手以外に漏らさないこと、を書きます。
誹謗中傷は、民法上は不法行為の問題になり得ます。他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は損害賠償責任を負い(民法709条)、名誉や自由を侵害した場合などには、財産以外の損害(慰謝料)も賠償しなければなりません(同法710条)。名誉を傷つけた者に対しては、裁判所が、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命じることもあります(同法723条)。規約の禁止は、こうした法律上の責任とは別に、受講契約の中で置く約束です。中傷が違法かどうかの判断を待たなくても、運営者は規約に基づき、投稿の削除や利用の制限をとれます。
見落とされがちなのは、講師やスタッフ側にも同じ基準を及ぼす条項の必要性です。受講者向けの規約に「受講者はハラスメントをしてはならない」としか書かれていないと、講師から受講者への言動が問題になったとき、規約が運営者の手を縛りません。受講者が講師や運営者に関する苦情を申し出る窓口を、受講者間のトラブルの窓口とは別に(または、少なくとも窓口の担当者が当事者にならない形で)用意しておくことが、実務上の工夫です。
- 受講者は、他の受講者、講師及び当社のスタッフに対し、人格を傷つける言動、性的な言動、望まない接触、繰り返しの連絡、成績や認定を理由とする不当な要求その他、相手に不快感や不安を与える行為をしてはなりません。講師及び当社のスタッフも、受講者に対して同じ行為をしてはなりません。
- 実技の練習は、参加する受講者の同意に基づいて行います。受講者は、練習のいつの時点でも、中止を求めることができ、中止を求めたことを理由に、不利益な取扱いを受けません。
- 受講者は、実技の練習を通じて知った他の受講者の身体の状態、既往歴、相談の内容その他の私的な事情を、本人の同意なく、練習の相手以外に伝えてはなりません。
- 受講者は、講師が認めた場合を除き、実技の練習中に、他の受講者を撮影し、又は録音してはなりません。講師が認めた場合でも、映った受講者が撮影の取りやめを求めたときは、直ちにこれに応じなければなりません。
申出の窓口は、別の条で定め、担当者が申出に関係する者であるときは他の担当者が対応する形にします。
グループ内の発言・相談内容・連絡先:秘密保持と個人情報の両方で扱う
コミュニティの中では、受講者が自分の体験や悩みを話します。私的な内容が出る講座では、「ここで話したことは外に出ない」という安心が、場の質を支えます。規約に書かれている典型は、他の受講者の個人情報や発言を、本人の同意なく第三者に開示してはならない、という定めです。一方で、運営者の側には、受講者の個人情報をどう取り扱うかという別の義務があります。この二つを混ぜて書いている規約が少なくないため、整理します。
| 情報の種類 | 受講者に求めること(規約) | 運営者の側の義務(個人情報保護法) |
|---|---|---|
| 他の受講者の氏名・連絡先・居住地 | 講座の目的以外で使わない。勧誘や連絡先の転売に使わない。 | 受講者名簿を他の受講者に見せる、配布する場合は、個人データの第三者提供の問題になる(法27条1項)。 |
| グループ内の発言・相談内容 | 本人の同意なく外部に公開・転載しない。録画・スクリーンショットで保存しない。 | 運営者が内容を保存・分析する場合は、利用目的を特定し(法17条1項)、本人に明示又は通知・公表する(法21条)。 |
| 病歴・心身の状態・家庭の事情 | 他の受講者に聞き出さない。練習相手以外に伝えない。 | 病歴などが含まれる情報は要配慮個人情報(法2条3項)。運営者が取得するときの扱いを別に確認する。 |
表中の「法」は個人情報の保護に関する法律です。個人情報取扱事業者は、個人情報データベース等を事業の用に供している者で(法16条2項)、受講者名簿を持つ運営者は通常これに当たります。
規約の秘密保持の条項でよく起きるのは、秘密の範囲を「受講者情報、コミュニティ内の発言その他一切の情報」のように広く書き、受講者本人が自分の体験を語ることまで禁止してしまう形です。受講者が自分自身の情報や体験を語る自由を除き、守るべきなのは、他の受講者の情報と、講座の非公開の内容だと整理するほうが、規約の目的に合い、実際の運用でも守られます。
録画や画面の保存についても、整理が必要です。講義の録画や画面の保存は、自分の復習のために行うなら、私的使用のための複製として許される場合があります(著作権法30条1項)。ただしこの規定は、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する」場合のものです。同期のグループに講義のスクリーンショットや録画を共有すると、「限られた範囲」にとどまるとは限らず、講座の教材の扱いは養成講座の教材の著作権と生成AIの規約の問題にもなります。規約では、法律上許される範囲と、契約として禁じる範囲を分けて書き、グループ内への共有を明確に禁じておくと、受講者が迷いません。
- 受講者は、本講座のグループ、チャット、ライブ講義その他の場で知った、他の受講者の氏名、連絡先、発言、相談の内容、家庭又は健康に関する事情その他の私的な情報を、その本人の同意なく、第三者に開示し、公表し、又は本講座の目的以外のために利用してはなりません。
- 受講者が、自己の体験、意見及び感想を、自己の情報として発信することは、前項の制限を受けません。ただし、他の受講者が特定され、又は特定され得る形での発信は、同項に当たります。
- 受講者は、当社が認めた場合を除き、グループ内の投稿、ライブ講義の映像及び音声を、録画、録音、画面の保存その他の方法により記録し、又は第三者と共有してはなりません。
- 当社は、受講者の氏名その他の個人情報を、他の受講者に提供するときは、あらかじめ、提供する情報の項目、提供先の範囲及び提供の目的を示して、受講者の同意を得ます。同意をしなかったことを理由に、当社は、受講者に不利益な取扱いをしません。
第4項は、受講者名簿や参加者一覧を他の受講者に見せる運用をするときの定めです。そのような運用をしないなら、第4項は「他の受講者に提供しない」と書き換えます。
措置をとったあとの受講料・修了・認定の扱いを、あらかじめ決めておく
グループの運営ルールで最も紛れが出るのは、措置をとったあとのお金と資格の扱いです。実務では、禁止行為があった場合に、「事前の催告なく受講停止や契約解除ができ、既に支払われた受講料は返金しない」と書く例が少なくありません。しかし、受講者どうしのトラブルで解除を選んだ場合、受講料の返金を一切しない定めは、問題を一律に処理しようとして、実際の損害や提供した役務とかけ離れた結果になることがあります。契約を続けたまま違反に科す違約金は、消費者契約法9条1項1号(解除に伴う違約金)ではなく、賠償額の予定に関する民法420条、公序良俗に関する同法90条、消費者契約法10条の問題として検討します。
返金の考え方は、段階を踏んで決めると説明がつきます。違反によって解除した場合でも、解除の時点までに提供した役務の対価と、これから提供しなくてよくなった役務の分は、区別できます。運営者の事由(事実の誤認、運営者側の不手際)で措置をとった場合は、返金や回復をする、と別に書いておくことが、不当な結果を避ける工夫です。受講者の違反を理由とする解除の可否と、返金の範囲は、養成講座の受講契約書の返金の条と合わせて設計します。
資格スクールに固有の論点として、措置と修了・認定との関係があります。受講者間のトラブルで受講を停止された受講者は、それまでの学習の成果を、修了や認定試験の受験資格として使えるのか。停止が解けたあとの期限の扱いはどうなるのか。認定を得たあとでハラスメントが発覚した場合は、資格を取り消せるのか。規約が何も書いていないと、これらはすべて運営者の事後の判断になります。認定後の取消しの手続は、事前の警告、是正のための相当な期間、説明の機会、理由の通知を整えておくと、恣意的だと争われるおそれを下げられます。詳しくは認定講師の資格の停止・取消しと規約の手続にまとめています。受講者間のハラスメントを認定の取消事由として挙げる例では、認定前の違反と認定後の違反とで手続を分けて書いています。
よくある失敗と直し方:コミュニティ関連の条項の書き方
よく見られる型と、直した書き方を対比します。
書き方の例 コミュニティ関連の条項
受講者間トラブルの責任
受講者どうしの紛争やトラブルについて、当社は、故意又は重過失がある場合を除き、一切の責任を負わないものとする。
受講者どうしの賠償や謝罪は当事者間で解決し、運営者は仲立ちをしない。運営者は、申出を受けて事実を確認し、措置をとる権限を持つ。責任の上限を定めるなら、例外を含めた一文で書く。
ねらい全面免責は軽過失の全部免除として無効になり得る。運営者が動ける根拠は残しつつ、免責の範囲を紛争そのものに絞る。
勧誘の禁止
本講座に関連した内容か否かに関わらず、営利、非営利を問わず、受講者を勧誘する行為を禁止する。
受講で知った連絡先を使った商品・事業・投資・宗教等の勧誘と、自己の有償活動の個別案内を禁止。自己の体験の発信、求められた場合の回答、運営者が認めた案内は除く。
ねらい広すぎる禁止は、運営者自身の案内や認定講師の活動まで止める。除外を書くと、規約が守られ、運用で争われにくい。
措置と返金
禁止行為があった場合は、事前の通知なく契約を解除でき、受講料は一切返金しない。
軽い措置から段階的にとり、重大な事案は段階を飛ばせるが、理由を通知する。解除後は、提供済みの役務と未提供分を区別して返金の範囲を決める。運営者側の誤りは取り消して回復する。
ねらい一律の無催告解除と全額不返還は、争われたときに根拠を説明しにくい。段階と理由の通知は、運営者の判断を守る。
ヒヤリングで確認すること:コミュニティを作る前に、運営者に聞いておく問い
受講者間のコミュニティの条項は、講座の内容と運営の実態によって、書き方が大きく変わります。条文を考える前に、次の事項を運営者に確認します。確認の理由とあわせて示します。
確認したい問いと、その理由 コミュニティと受講者間トラブル
受講者が交流する場は、どこに、いくつあるか(公式のグループ、ライブ講義のチャット、実技の練習、修了後の会など)。誰が管理者権限を持っているか。
規約が対象にする場と、運営者が実際に削除・制限できる場が一致しているかを確かめるためです。管理者権限を持たない場は、「措置をとれる」と書いても実行できません。
受講者どうしの練習や相談の中で、身体に触れる、体の状態を話す、撮影するといった場面があるか。
実技の練習の同意、中止の合図、守秘、撮影の扱いを書くかどうかを決めるためです。講座の内容によっては、練習の前に同意の確認を取る方法まで必要になります。
運営者自身が、受講者に対して、有料の追加サービスや紹介制度、仕事の紹介を案内しているか。認定講師になれば仕事があると説明しているか。
受講者の勧誘を禁じる規約と、運営者自身の案内が衝突しないようにするためです。また、仕事の紹介や収入を訴える宣伝は、書き方によって、規制の対象になる場合があります。
認定を得た卒業生が、受講者に対して、自分の教室や講座を案内してよいか。よいなら、どこで、どの方法でか。
勧誘の禁止と、認定講師の活動を認める範囲の境目を決めるためです。認定講師規約の活動範囲と整合させる必要があります。
過去に、受講者の間で、勧誘、中傷、金銭の貸し借り、連絡先の持ち出しなどのトラブルがあったか。どう対応したか。
規約に書くべき禁止の型を、実際に起きたことから決めるためです。実際に起きた対応と規約の内容が食い違うと、後の措置が争われやすくなります。
回答のうち、運営の実態の推測にとどまる部分は、条文にそのまま書かず、実際の運用を確認してから決めます。
よくあるご質問
受講者どうしのトラブルについて「当社は一切関与しません」と規約に書けば十分ですか。
十分とはいえません。個人が事業と関係なく受講する場合は消費者契約法の規制があり、責任の全部を免除する条項は無効とされます(8条1項1号・3号)。また、運営者が自分で設けた場の管理まで免責されると読める文言は、同法10条の問題にもなり得ます。受講者間の賠償や謝罪には関与しない一方、申出を受けて事実を確認し、投稿の削除や利用の制限をとれるようにしておくのが安定した書き方です。
受講者への勧誘の禁止は、どこまで広く書けばよいですか。
受講で知った連絡先を使った商品・事業・投資・宗教などの勧誘と、自分が主宰する有償活動の個別案内を中心に書きます。「営利、非営利を問わず一切」と広げると、運営者自身の案内や認定講師の活動まで止まります。自己の体験の発信や、求められて答える場合は除くなど、除外も書いておくと運用で争われにくくなります。
実技の練習でのハラスメントを防ぐために、規約に何を書きますか。
練習への参加は同意に基づくこと、いつでも中止を求められ不利益を受けないこと、練習で知った身体の状態や相談内容を相手以外に漏らさないこと、無断の撮影・録音の禁止、申出の窓口を書きます。講師やスタッフにも同じ基準を適用すると明記し、窓口の担当者が当事者になる場合の入れ替えも定めておきます。
グループ内の発言を秘密保持の対象にするとき、気をつける点は何ですか。
守る対象を他の受講者の情報と講座の非公開の内容に絞り、受講者自身の体験の発信は除きます。運営者の側は、名簿を他の受講者に見せるなら第三者提供の同意が要り、発言を保存・分析するなら利用目的の特定と通知・公表が要ります(個人情報保護法17条1項・21条・27条1項)。受講者に求める義務と運営者の義務は別に書きます。
受講者間のトラブルで契約を解除したとき、受講料はどう扱いますか。
一律に返金しない定めは、争われたときに説明しにくくなります。解除の日までに提供した役務の対価と、未提供の部分を区別して、返金の範囲を決めます。契約を続けたまま違反に科す違約金は、消費者契約法9条1項1号ではなく、民法420条・90条や同法10条の問題として検討します。運営者側の誤りで措置をとった場合は、取り消して回復する定めも置きます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)